簡易メニュー


『それはまだ、彼が「世界」と呼ばれていた頃の話』 ラタトスクとテネブラエ。捏造注意。
『夜光虫』 エミルさん(緑)
『朧』 現パロ『deformity』シリーズ。エミとラタ
『ニセモノヘヴン』 何か間違った逆行ネタ。エミル視点

帰る








『それはまだ、彼が「世界」と呼ばれていた頃の話』(TOS-R)




あの方の機嫌がいいと、巡るマナが少しだけ、光を帯びる。
まるで、主に呼応するように。
あの方の喜びは輝くマナとなって星を巡り、やがて世界を包み込む。


その瞬間が、たまらなく好きだった。





「これは、なんだ?
 初めて見るな。」


清浄なマナに誘われて姿を現した、初めて見る命の形に、霧のように付き纏って観察しているその時でさえ、マナは喜びに満ちている。




名前を、呼ぶ。




あの方の興味を引くという最高の名誉を受けたその獣に、嫉妬しているわけではないけれど。


『―――様』


それは言葉ではなく、旋律ですらない、存在の意味そのもの。
名前(ことば)で定義されないあの方を、ただ振り向かせたいという気持ちがマナを震わせ、音となり、あの方に知らしめる。ここに、かの御方を呼ぶ、卑小な存在があることを。




「どうした?」




その音に応えるために、今知ったばかりの獣の姿を真似、強くて優しい赤色の双眸をこちらに向けてうっすらと笑う。
その時でさえ、マナは。






世界は、美しい。
こんなにも喜びがあふれているのだから。





それはまだ、あのお方が「―――」と呼ばれていた頃の話。


世界はあまりに美しく、


そこに憎しみは在り得なかった。








----------------------------------------------------------





『夜光虫』(TOS-R)




ふ、とまぶたが開いたら、暗い色の違和感だけが、辛うじて見えた。
慣れない手触りのブランケットを押しのけて体を起こす。


冴え渡る静寂に、明けない暗闇。


そこが自分の部屋でないことを思い出したのは、それから間もなく。霞がかった思考が少し晴れてきてからだった。
繰り返す瞬きは緩慢だけれどしっかりしていて、眠りが更に遠ざかる。


知らないベッドで眠るのは久しぶりだった。
それの最後の記憶は、ルインに辿りついた日。


確かあの時は、心臓のあたりが痛くて痛くて、頭が熱くて、なかなか寝付くことができなかった。


今日はというと、胸がストンと冷えて、くたびれていたからか、ベッドに潜り込んでからの記憶がほとんどない。
けれど、何故目が覚めてしまったのだろう。





窓の外には夜の町が見える。
きっとこれから旅をして、世界中の色んな景色を見るのだと思う。
その始まりの日に立って、何故だろうこの空っぽな気持ち。



何に憚ることもなく、部屋を抜けて外へ出ると、眠りの町が夜に佇んでいる。


秘密の場所に来たみたいな錯覚。
だけどモヤモヤと寂しくて、空の賑わい、墨空の光点へと視線を送る。
その静けさに安堵した。


(あの時、空は燃えていたから。)







-----------------------------------------------------------






『朧』(TOS-R)





「エミル、お前・・・。」
自分と同じ顔が目の前、やけに近くに居る。
双子の兄弟であるラタトスクだ。そんな当たり前のことに、何故だか今日はすぐに気付けなかった。
額に柔らかい圧力。
多分、これは、ラタトスクの・・・。
「顔真っ赤っつーか・・・。
 熱あるんじゃねえか。」
「えー・・・。」
そのまま額を軽く押されて、ぼすん、とベッドに逆戻り。


今日は休みの日で、することもないから目が覚めてからもしばらくベッドでボーっとしていて、今やっと起きる気になったところだったのに。
「ホントに・・・?」
体がぽかぽかしてて、なんだかだるくて、何もやる気が起こらないのは、今日が休日で寝起きだから、じゃなかったのか。


ラタトスクに差し出された体温計を受け取って、検温を始める。そしてラタトスクはベッドの端に腰掛けてそれを待っている。
「別に、昨日調子が悪かったとかそういうのはなかったけどなぁ・・・。」
「たまにあるだろ。こーゆーの。」
「そうだっけ・・・?」
無気力がじわじわと全身に行き渡って、頭もよく働かない。
確かに、ラタトスクの言うとおりだった気がしなくなくも、なくない。
ぼんやりと90秒過ごしたのち、ぴぴぴとくぐもった電子音に体温計を取り出すと、横からラタトスクがそれを掻っ攫った。
「ちょっと」
「38度。カンペキだな。
 母さんに知らせてくる。」
「・・・うん・・・。」
さっさと体温計を仕舞ってしまって(数字、見たかったのに・・・)、ラタトスクはさっさと部屋を出て行ってしまった。
さんざんウダウダした挙句、どうやらしばらく寝ていなければならなくなった気配に少しがっかりした。
折角の休みに、寝ているだけというのもつまらない。
体はぽかぽかしていて、ちょっと熱いくらい。熱の所為か頭はボーっとして、鈍痛もする。
けれども咳は出ないし喉もやられているようでもないし、ただひたすらにだるいだけだ。
辛くない分、とても退屈だった。


「エミル。」
退屈な扉を開いて、ラタトスクが帰ってくる。
「アステルんところ行って診てもらうか?」
「びょーいんに・・・?」
「辛くなくて面倒なら別に行かなくてもいいけどな。
 俺はそう思う。」
「行ったら検査とかあるかな。」
「あるんじゃねーの。何度かやっただろ。」
「・・・そっか。じゃあ、今日はいいや。
 明日、治らなかったら行く。」
「ん。」
病気をして不安で、そして退屈でもあるけれど、今は病院でやることになるだろう検査がひどく億劫だった。体がだるい所為で余計に。
「ラタトスク。」
自分のベッドの上、こちらがよく見える位置に腰を下ろしたラタトスクを、視線に捉える。
すると、彼にとっては珍しいことに、返事をしながらこちらに移動してきてくれた。
「何か欲しいものでもあるのか。」
珍しく、優しい。
いや、普段が優しくないというニュアンスではなくて。珍しく、露骨に優しい。
「冷蔵庫にさ、ポカリあったよね。」
「ああ・・・。」
ラタトスクの視線が斜め上を向く。
多分、本当にそうだったか(つまり、冷蔵庫にポカリが入っているかどうか)を思い出そうとしている。
けれども、その必要はない。こちらには確信があるからだ。
「お願い。」
「・・・・。わかった。」


ラタトスクが部屋から出て行くと、退屈が帰ってきた。
天井とにらめっこをしなければならないような退屈だ。


そしてそれは、ラタトスクと入れ違いに部屋を出て行く。
「ほらよ。」
「ありがとー。」
体を起こして、コップを受け取る。からからと氷の音がした。
「ラタトスク。あんまり傍に居ない方がいいよ。」
手が空いて、すとん、とこちらのベッドの端に座るラタトスクに、なんだか申し訳ない気持ちになる。
双子の兄弟で、おんなじ境遇で、とてもよく似ていて(性格はそうでもないけれど)、大抵は一緒に居るけれど、こんな時まで一緒に居る必要はない。
というか、ほとんど同じだからこそ、一緒に居るのはまずい。
「風邪だったら、うつっちゃうよ。
 いつもそうだったじゃない。」
「気にすんな。
 スポーツやってるし、お前ほど弱くはねーよ。」
「どうだか・・・。」
ラタトスクの『スポーツやってれば健康説』はともかく(何よりも過信が一番よくないと思うのだが)、きっと立場が逆になっても同じようなやりとりをする、そんな確信があるので、あまり強くは言えない。
「お前だって小さい頃、俺の看病するんだって駄々こねて、結局風邪うつって挙句こじらせただろ。」
「う、うるさいな!その時僕だけが入院して寂しくて泣いてたクセに!」
「なっ・・・、泣いてねーよ!お前だって病院で俺が居ないんなら帰るって駄々こねてただろうが!」
元々二人揃って体が強くないせいで、こんな思い出ならたくさんある。
風邪をひいた時に出してくれるゼリーを取り合ったり、苦手な薬をこっそり押し付けあったり。懐かしい記憶だ。



「ま、でも。」
空になったコップを受け取って、ラタトスクは目を細めて、笑うような、微妙な表情をする。
「うつるんなら、それでいいんだ。」
「・・・。」
こちらも、笑うしかない。
「うん。
 ・・・そうだね。」


コップを手に、またラタトスクは部屋を出て行ってしまったけど、小さな悪い考えが胸の中をぐるぐるしていた所為で、部屋に訪れたのは退屈ではなく、重たいだけの静寂だった。








-----------------------------------------------------------






『ニセモノヘヴン』(TOS-R)





真っ暗な闇の中。


なんだか泣けてくる。悔しい。
すぐ其処だったのに。そこに在ったのに。


お母さん、ごめんね。お父さん、ごめんね。
僕、やっぱりダメだった。
仇、取れなかった。
負けちゃったよ、僕。守るべきものも守れないで。


結局、わからなかった。
ロイド、何故、何故・・・・!!!




畜生!
あいつをぶっ殺すまで死ねるか!!!




暗い暗い闇の底から、激しい怒りが湧いてくる。
それと同時に、蘇るものがあった。痛みとか、痛みとか。
・・・痛み?



まぶたは思ったよりもすんなりと開いた。
口を開けば、空気が入ってくる。


生きてる。


「マルタ・・・!」
それからすぐ、守らなければならない存在を思い出して、その姿を探した。
その位置はすぐに把握できた。
そしてそのすぐ其処に、別の存在が在ることも。
「誰・・・
 !?」





はじめ、ロイドだと思った。
最悪を想定して背筋が凍えた。
けれど、そうじゃなくて。
そうじゃ、なくて・・・・。


「・・・え・・・・?」


マルタの額に触れていたその影はすぐこちらに気付いて、視線が交わった瞬間にすぐそれを逸らす。
けれど僕は逸らさない。
逸らせるわけがない。


そこに居たのは、僕だったのだから。


「・・・な、に・・・?」


守らなければならない、マルタを差し置いて僕は知らず後退した。
自分と同じ顔の人間と出会うことは凶兆とされる。
そんなジンクス、僕は今まで気に留めていなかったけれど、ホントウに目の前にしてみると、その不気味さに体が震える。
顔つきは勿論、身長や髪型まで同じだ。違うところといえば、目の色くらい。
それは、血のような赤い色をしている。


「落ち着け、エミル。」


それは僕より幾分低い声で、何故知っているのか、僕の名前を呼ぶ。


右手を背に。
固い、剣の柄の感触に、それを強く握り締める。


「なんだテメェは!マルタから離れろ!」
剣を抜く。
それのすぐ傍らには、相変わらず気を失ったままの、マルタが居る。
なんだか知らないが知りたくもないが、マルタに危害を加えるなら、俺はそいつを斃さなければならない。それが何者であろうと!
「なんで俺の名前を知ってる。目的はなんだ!」
噛み付く声色に、それは何故だか、苦笑して見せただけだ。
気に食わない!
「いわねーなら、力づくで聞き出すぜ!」


『待ちなさい、エミル。』


エモノを狙う集中力を、霧散させたのはセンチュリオン・テネブラエの声だった。
闇の中から闇色の姿を現し、僕のすぐ傍らで、じっと、探るような目を、向こうにいる彼に向けている。
僕と同じ顔をした彼もテネブラエを微妙な表情で見つめ、お互いに無言を続ける。


「・・・ん・・・・。」
マルタが気がついたのは、その時だった。
「マルタ!気がついたの!?」
目を開いたマルタは、まずすぐ傍にいた彼に視線をやり、その途中で僕の声にこちらを振り返る。
「エミル・・・。
 ・・・・あ、あれ?」
僕ともうひとりの彼と、見比べてマルタはあからさまに戸惑っている。
「え、エミルが二人!?」
「俺はエミルじゃない。」
マルタの戸惑いに、解を示したのは彼だった。
「そうだろ。テネブラエ。」
『・・・・。
 やはり、ラタトスク様、なのですね・・・。』
「ラタトスク・・・・?」
ラタトスク。
この世界の魔王であり、僕の契約主である、あのラタトスク・・・・?


「「えええええ!?」」


僕とマルタの叫びが、ユニゾンした。
「えっ?
 あ、ホントだっ、無い!」
額を探って、マルタが更に感嘆を深くする。
『・・・・。』
「・・・・。」
一方で、僕はそのラタトスク、と、テネブラエを見比べている。
ラタトスクは、眠りについているはずじゃなかったのだろうか。
そして、目覚めたのだとして、多分、久しぶりに再会したんだと思う。
この短い期間で、テネブラエがラタトスクに心酔していたようなフシがあることは、僕にだってわかった。
それなのに、二人とも、とても嬉しそうには見えない。
ラタトスクに至っては、悲しそうにすら、見える。


「そうだ、ルーメンのコアは・・・!」
何かを思い出したように、マルタが祭壇を振り返る。
「遅かったみたいだな。既にロイドが持ち去った後らしい。」
「そんな・・・!」
マルタが見上げるのは、空っぽの祭壇。
僕の記憶が正しければ、気を失う前にはそこに薄い黄色の宝石があったような気がする。
「ねえ、ラタトスク、貴方はやっぱりあれがないと・・・。」
「・・・・・。
 そうだな。この世界のマナの偏りを正すためには、魔物との縁を取り戻さなきゃダメだ。
 その為にはセンチュリオン共を目覚めさせる必要がある。」
「・・・そっか。やっぱり、ラタトスクが目覚めても・・・・。」
「・・・すまない。
 エミル。」
「は、はい?」


よくわからない話の連発で、置いてきぼりを食らっていた僕を、唐突にラタトスクが振り返る。
ちょっとびっくりして、相手は魔王だし、ちょっと声が上擦ってしまった。
けれど、ラタトスクは抑揚の無い表情で、それに気付かないような素振りだ。
「お前には確か説明が必要だな。
 ・・・・・・・・・。 それから、今の間は仮初めとしてお前の姿を借りさせてもらう。
 慣れないうちは気味が悪いかもしれないが、我慢しろ。」
「あ、それで僕と同じ顔・・・なんですね。
 そうだ、僕、ラタトスクの騎士だから、これからはラタトスク様をお守りすればいいん、ですか?」
本当は、マルタを守りたい気持ちで騎士として契約したんだけど。
でも、その契約の本来の目的はラタトスクを守ること、だったはず。
そう考えての僕の質問に、何故か、ラタトスクはヘンな顔をした。
目を真ん丸くして、それから、物凄く気まずい顔。少し頬が紅潮してもいる。
あれ、僕、何か変な事言ったかな。
「・・・あの、なんだ。
 俺のことは呼び捨てでいい。・・・頼むから。」
「・・・は、はあ・・・?」
魔王なのに。契約主なのに。でも何故かとても切実な感じがしたから、そうすることにした。
・・・まだ恥ずかしそうな顔をしている。・・・そんなに変な事、言ったかな・・・?
「と、取り敢えず、此処を出よう。」
「そうだ!ロイド、まだ近くに居るかもしれないもんね!」
「そっか!じゃあ、急がないと!」
『・・・・・・。』
「・・・テネブラエ?」
『・・・・いえ。行きましょうか。』
「・・・・・。」


なんだろう。やっぱりこの二人、ヘンだ。








(いいか。お前は、絶対に出てくるなよ。)
(わかってる。でも、これから、どうしよう・・・?)
(・・・わからねーよ。少なくとも、元に戻るまで・・・・。あいつらを、騙し続けるしか、ないだろ。)
(いつまで?どこまで?)
(・・・・・。)
(どうして、こんなことに・・・?)










簡易メニューへ↑
テイルズメニューへ戻る


広告 [PR]ヒートテック  転職支援 わけあり商品 無料 チャットレディ ブログ blog