・『蒼』 カイル視点 ・『好き』 カイル視点 ・『夜が咲く』 父親視点
『蒼』(TOD2) 疲労に鳴く体を起こして空を仰いだら、変わりない青がそこにあった。綿みたいに白くておいしそうな雲が、丸く連なって浮かんでいる。フロートみたいだ。 そんな穏やかな空。ダイクロフトの無い。外殻も無い。救いの要らない世界に英雄なんて生まれない。でも、それでも、それがいい。この空が好きだから。脅威に怯える人がいない、それって凄く幸せだ。 陽の光を目一杯浴びて、ぐ、と体を伸ばしてみると心地よい感覚。さて、休憩もここまでにしてもう少し頑張ろうかな、と思ったところに、風が声を運んできた。ふわり、って優しい風が。俺の名前を呼んでる。 何故だか胸が高鳴った。おかしいな。なんで今更?だってこんなことはいつも・・・・(いつも?) 振り返った先の、微笑みながら俺の名前を呼んで手を振る姿に、彼女の姿に、 何故だか、涙が零れた。 あまりの懐かしさに胸が張り裂けそうで、それなのにこんな過去も未来も存在しないことを俺は知っている(何故?) 彼女の笑顔がフェードアウトして、代わりに自分の部屋の天井が目に飛び込んできた。覚えのあるそれよりも随分霞んでいると思ったら、水の伝う感覚で気付く。あぁ、枕までびしょびしょだ。どうしたんだろう、俺。変な夢でも見たのかな。 頭痛のする頭を抱えてなんとか起き上がっても、新しい筋を作って未だ涙が止まない。変だ。変なの。何故だか俺は、今嬉しくて堪らない。 ↑ ----------------------------------------------------------- 『好き』(TOD2) 雪が肌の上で溶ける冷たさが永遠でも俺は構わなかった。どきどき、って胸が鳴ってそれが俺に元気と温かさをくれたから、いくらでも俺は立っていられたんだ。 大好きだよ、リアラ。 永遠が無いのはどうしてだろう?ロニもジューダスも、ナナリーもハロルドも、好きなんだ。18年前に世界を救った英雄が一人じゃなかったように、俺にはかけがえのない仲間がいて、順番なんてないくらいにみんなが好きだ。 ねえ、リアラ。どうしてずっと一緒にいられないんだろう? 真っ白な雪原を見下ろしたら少し寂しい気持ちになって、それをリアラに話したら、リアラは笑って向こうを指さしながら「あそこにカイルを待っている何かがあるのかもしれなくても?」と言った。 リアラにはまるでその向こうが見えているみたいで、俺ときたら少し前のリアラの気持ちがわかる程度。それよりも知りたいのは今なのに。 待っているのは優しいものばかりじゃないのに、それなのにリアラは穏やかに笑ってる。 好きだよ、リアラ。 好きなのに。 ↑ ----------------------------------------------------------- 『夜が咲く』(TOD2) 抱きしめる腕に高い体温が伝わってきた。閉じた瞳は頑なで、上下する小さな胸に耳を押し当て、滑らかな肌に頬擦ると柔らかな肉のにおいがする。そっと食めば小さくむずがゆい声を上げるけれど、目覚める気配というものはない。そこに連綿と受け継がれる血統を感じ取り、嬉しいような困ったような。 「おやすみ、カイル。」 この腕の中、すっぽりと収まってしまう小さな体が、未来というものを眩しく感じさせる。 夢だとか希望だとか、そんな幼い言葉が、鮮やかな色彩を持つ。 いずれ傷つき倒れながらも、起き上がり成長していくこの子の傍に、願わくば自分が居ることを。 ↑ ----------------------------------------------------------- 『コーラル』(TOD2) 刺すような冷たさが全身をくるむ。重い浮力が底から体を押し上げて、目は閉じたまま。肌で温度が上昇していくのを感じた。 その心地よさに身を委ねたい欲求の奥で、きつく自分を戒める言葉が醒める。 目覚めよと名前を呼ぶ声がする。 身を切る冷たさに沈む体を引きずり上げんとする声が。 やめろ。 僕はこんなこと、望んでいない。 祝福など、救済など、僕は望んでなどいないんだ! ↑ ----------------------------------------------------------- 『螺旋回廊』(TOD2) ぬるま湯みたいな温度だ。温かくて気持ちいい。 自分の部屋を出て左手に、院で飼ってるハムスターがいる。ケージを覗き込んでみても姿が見えない。寝てるのかもしれない。 ―カイル、カイル、― 俺を呼ぶ声。誰だろう? シナモン?ユニー?それとも、母さん? ―スタンさんが帰ってきたよ。 父さんが、帰ってきたんだ― 父さん。俺がずっと会いたかった人だ。 俺の誇りで、目標で。 俺はドキドキして、凄く、どうにかなっちゃったみたいにドキドキして、飛びつくみたいに階段を駆け下りた。 そこに父さんがいるって、俺は確信していた。 お帰り、父さん。 ずっとずっと、待ってたんだ。 俺、父さんから色んな話、聞きたくて。たくさんたくさん、話したいことだって溢れるくらいにあるんだ。 お帰り、父さん。 これからは、いっぱい一緒に・・・・ 大きな手が、頭に載せられる感触がした。ぽん、って。 ふわふわ、って俺の髪を押しつぶしながら。 目の前には大きな人の姿。俺の身長は、まだまだ父さんには及ばない。 父さんだ。父さんがいる。そう思って、俺はやっぱりドキドキがとまらない。 なのに、どうしてだろう。 目の前に父さんがいるのに、俺、やりたいことが山みたいにあるのに、何故だか急に目蓋が重くなって、持ち上がらない。 首も持ち上がらなくて、俯いたまま、動かない。 父さんの顔が、見えない。 父さん、俺は。 唇も動かない。父さんに、何も伝わらない。 ぬるま湯みたいな、温かさ。 痺れるような温度が、俺の全身を侵していくよう。 飲み込まれていく。 そんな夢ばかり見る。 簡易メニューへ↑ talesメニューに戻る