・『夏の思い出。』 P,D,E,D2,S,R,A,S-Rの主人公達 帰る
『夏の思い出。』(Tales MIX) 夏の暑さで全部溶けた。 冷蔵庫を開け放して覗き込んだまま、ロイドがボーっとその冷気を顔に浴びている。 扉のポケットに買い溜めした牛乳。賞味期限の切れかけたレモン果汁(100%)。 どれくらい開いたままなのか、うっすらと結露が始まっている表面。 二分割して詰め込まれた大きなスイカ。これでは、冷えるものも冷えない。 エコに優しくないロイドの肩に、とんとん、と誰かの手。 振り返ると、ぷすり、と人差し指が頬に刺さった。 古典的な罠が成功して楽しそうに笑うのはクレス。その向こうで、金髪の親子がまるで宝物を発掘したみたいに、プラスチックのカキ氷製造機を掲げた。 開け放たれた収納ボックスの周りはひどい有様だった。 リッドの呼びかけに、庭で水を撒いていたエミルも靴を脱いで家の中へ。 ごとり、ごとりとルークが棚の奥から引っ張りだしたのは、去年使わなかったシロップの瓶。賞味期限は見なかったことにしよう。 ・・・棚の周りは、ひどい有様になった。クレスも手伝って片付けた。 涼しげなガラスの器は、少し埃をかぶっていて、今ヴェイグが洗いなおしている。 イチゴ、レモン、メロン。 オーソドックスなラインナップ。練乳は春の、イチゴの付け合せの余り。今日使い切る勢いで。 製氷はヴェイグにお任せして、器械を動かすのは、カイルが名乗りを上げた。 暑いのに元気だなぁ、とはロイドの談。何でもいいから早く食べようぜ、とはリッドの談。 にぎやかな台所。居間では、忘れ去られた扇風機が、カタカタと首を振っている。 半分、かき氷が出来たところで、カキ氷製造器のハンドルは、カキ氷初体験のエミルにバトンタッチされた。 人気のシロップはレモン味で、イチゴの減り具合はその半分もない。 今年で使い切らなければならないシロップは、ルークの発案で何故だかブレンドされてしまったりして。 そのあり得ない色彩にロイドが腹を抱えて爆笑し、ルークは自分のしでかした事態に変な声を上げた。 食べ物は大切にしよう。それが例え味がついただけの色水だとしても。 練乳が加えられ、更にマイルドな色遣いになったブレンドカキ氷に、逆にリッドの好奇心が刺激されたりしながら、人数分+αのカキ氷が完成した。プラスアルファとは勿論、誰が食べるともわからないミックスカキ氷だ。 盛り上がって火照った身体を内側から冷却。 おかわりはセルフサービスで。 イケテナイカキ氷は、全員が一口は食べた。最終的に平らげたのはリッドだった。 電気の無駄遣いをしていた扇風機はようやく本領を発揮し、「あ゛〜〜〜〜〜」と数人分の声を震わせる。 暑い夏の日。 降らない雨の代わりに大活躍するホース。そのシャワーを虹が横切る。 風も弱いから、風鈴が申し訳なさそうにちりちりと鳴る。 何故か始まり、そして白熱した台詞しりとりが拍子抜けする終わり方をした午後6時。 なおも夏の日差し。 夕飯担当のエミルが掲げたレシピはカレーライス。 気温が30度超えていようが、湿度が70%超えていようが関係ない。 材料は揃っているし、やる気が出てしまっているのだから仕方がない。 仕方がない。 じゃがいも。にんじん。たまねぎ。牛肉(特売)。 カレーを構成するパーツ達が軒を連ねる台所に、金髪の親子が乱入した。 曰く、「カレーといったらマーボカレーだよね!」 不快指数が高かろうが、熱帯夜だろうが関係ない。 材料は揃っているし、食べたくなったのだから仕方がない。 みんなだって大好きだ。 口をついて出る言葉が「暑い」「熱い」ばかりになって、力不足な扇風機。たくさんの汗をかいてしまっても、お風呂に入ればさっぱりだ。 蚊取り線香の香りに包まれて、仕上げにかぶりつくスイカは、冷たくて甘い。 短い夏の夜が始まる。 長い夏の一日が終わる。 それはとある夏の思い出。 ↑ 戻る