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『眠い時は暗い話に限るよ』 暗い話
『失敗』 誤変換
『届け』 拘束
『始まったまま、終わらない。』 『under the sun』派生
『余裕じゃねーか。』 母親の愛
『死んでしまえば良いのに』 『闇傀儡』派生
『退廃的な夢を見た』 夢






『眠い時は暗い話に限るよ』(オリジナル)


「何をしにきた。」
「・・・兄様。」
小さな池の真ん中で、ぽたりぽたりと滴る音がする。
柔らかなミルク色の髪が、今は重そうに地面を指して。
こちらに背を向けて、拒むように佇んでいた。

知っている。
あの人がこんな風に拒絶するのは、泣いている時だってこと。
泣き慣れたあの人は、・・・兄は、既に泣く術を心得ている。
麻痺したともいえる。
だからあの人は一人で、音もなく、涙も流さずに泣くのだ。

可哀想な兄様。
生きづらい生から、狂おしい現実から、逃れること、目を逸らすこともできないで。
なぜなら俺が見ているからだ。
そうならないように、兄様を現実に縛り付けておく、逃れられないように監視している存在が、つまり俺がいるからだ。
唯一、本音を晒してもいい存在だ、と泣いていない時の兄様は俺に笑うが。
愛しんでくれるが。
その笑顔の奥底に渦巻く醜くてどす黒いものの存在を、俺は予想する。
何故なら、唯一心を開いているはずの俺の前で、あの人は決して泣かないからだ。
拒絶するからだ。

雫の滴る音がする。
兄様の涙は既に枯れている。だから、冷たい池の雫が、僅かにあの人の熱を吸って還る音だろう。

こんな時、どんな言葉も、兄様には慰めはおろか、気休めにすらならないのだろう。
・・・あぁ、いや。
ひとつだけ、あるか。
泣いている兄様が、微笑むかもしれない言葉が。

 「コロシテ アゲヨウカ?」

でも俺は黙っている。
黙っているから、兄様も返事を返しはしない。
モラルとか愛情とかじゃない、もっと強固でえげつないモノに俺たちは縛られている。だから、それを口にすることすらできない。
だからあの人は泣くことでフラストレーションを発散し、俺はその姿を見つけて自分を律するのだ。
同時に罰してすらいる。

けれど、そんな俺に突きつけられる罪状はない。
兄様に恨まれる理由もない。

生きているということ以外には。


「・・・兄様、あとで、部屋に帰ってきてください。」
それだけ伝えて、そこを離れる。
兄様の好きな点心が手に入ったから。
こだわらない兄様が少し口うるさくなる、そんなマホウの点心だ。

拒むことをやめたら、それを食べよう。

儚くとも、信じているのだ。
いつか悲しみが消える日を。
解き放たれる日が来ることを。
そしてそのとき、かつて抱いた愚かな空想が、浅ましい欲望が、
唯一のルートを持つ現実(リアル)から乖離した事を、密やかに安堵できることを。



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『失敗』(オリジナル)


損な失敗。

分かつ未知のその無効。

決して交わることのない。

立ちど待って、選ぶ分岐。

既に過去は過ちの累積。

それの連続。

知ら無い未来に例外は泣く、

後悔の連続。

憂鬱に沈む。

また逢いましょうが永延の分かれ。

変わらない今が代わって行く。

ねえ、神様。降りてきて。

僕は貴方の懺悔が聴きたい。

 こんなモノ創ってご免ナサイ?

一過性の時がもたらす、

そんな失敗。




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『届け』(オリ小説『???』)


重たい空気がまとわりつく。じっとりと湿気を孕んだ冷たい空気が。
コンクリートの床を、伸びくさしの爪で掻く。不快な感触に怖気が走った。
弱くあぎとを開閉する。声もため息も出なかった。

光がほしい。

温度がほしい。

安らぎがほしい。

とてつもない飢えと渇きを、満たしてほしい。

願わくば今すぐに。


さようなら光。
自分の識る最後は、血濡れの自分を映し出したそれ。
無情にも現実(リアル)を暴く存在。
けれどここには、それすら届かない。

暴かれてもいい。
縋りつく些細な望みを断ち切ってもかまわない。
ここは、とても寒いから。

今はその温度が恋しい。





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『始まったまま、終わらない。』(オリ小説『under the sun』派生小噺)


悲しみを理解した。

苦しみを認識した。

絶望を受け入れた。

憎しみを意識した。

怒りを把握した。

理不尽だ。
理不尽だ。
理不尽だ。


遮るものがあるから光はここに届かない。
闇がナカに入ってくる。
闇にカラダが解けていく。

光がなく輝けない瞳からあふれる涙が
、 壊れないように喰いしばった唇から零れる血が、
耐えるために誤魔化すように吐き出した言葉が、吐息が、

闇に呼応して離れていった。

冷たい床を涙が、血が穿つたび、
波のように押し寄せる感情を吐息に乗せて彷徨わすたび、

ぽつぽつ、と、冷たい部屋に体温が生まれて、鼓動が生まれて、

そうやって生まれたばかりの子ども達は、闇の中で己の母親の姿を探す。

けれど母親には、その存在を感知こそすれ、目視することはできなかった。
闇の濃すぎる故に。

それでも、闇に生まれた子ども達は己の創造主(ははおや)を見とめた。
そして、それを最古の記憶として闇へ飛び立つ。

愛の言葉を心に抱いて。


愛しい母親。
いつか、必ずそこから助けてあげるから。


彼女を愛して止まない闇と、闇が彼女に与えた感情が、
交じり合ってたくさんの子どもを創った。


彼女の絶望が癒えるまで、それまで、たくさんの、たくさんの命が生まれた。





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『余裕じゃねーか。』(オリジナル)


「大丈夫か!?」

浅く、速い呼吸。蒼白な顔には脂汗が滲み、
肉体苦を肩代わりできない代わりに、せめて心を支えようと握った掌に応える圧力もひどく弱弱しいものだった。
「しっかりするんだ!」
こちらの呼びかけに、存外しっかりした視線が返ってくる。
いくらか血色の悪い口唇が絶え間ない呼吸の中で形を作る。
名前を呼ばれていることに気付いたのは、それが二回目に同じ動作を繰り返したときだった。
「無理しなくていい、今は・・・・」
「大、丈夫。これくらい・・・。」
震える声で気丈に笑うと、握った手そのままに上身を起こす。
慌てて支えようと片方の腕を伸ばしたが、その手はあえなく役立たずと成り果てた。今にも死にそうな顔色をしているのに、どうしてそんなにも力強くあるのだろう。
「大丈夫、だよ。」
ほう、という吐息と共に、握る手に少し、圧力がかかる。
感じる温度は、確かに生きた人間のものだ。
合わさった掌と、それからこちらの顔を順に見つめ、彼女は不敵な笑みを作った。
美しくたくましくそしてどこか誇らしげに笑いながら、口を歪めてある種の恍惚も交えて彼女は言い放つ。
「この程度の痛み、お前を産んだ時とくらべたら。」

聞いてねぇよ。
この親馬鹿め。






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『死んでしまえば良いのに』(オリSD)


彼はよく珍しいものを見つけた、といって私の元へお土産と称されたものを持ち込む。

世界は広い。

もう随分と長い間この逢瀬を続けているのに、彼の『珍しいもの』は尽きることが無い。
彼の優しい発見は、終わることが無い。
そして、そのひと時で、私は彼の目を通した世界というものを、微かに感じることができるのだ。
共有できる喜びが、そこにあるのだった。

ダージリンの香りの中で、彼が笑う。
・・・あぁ、彼と、今何の話をしていたのだったか。
言葉はたくさんの嘘や誤魔化しを紡ぐ。けれど瞳(め)が映すのは唯真実。
私は彼の笑う目に、小さな翳りを見た。

「何かあったの?」
彼の話を断ち切って問うた。
流れを読まなかったのではなく、優先順位が働いただけだ。
すると、彼も何も気にした風も無く、いつも通りだ、と答えた。
確かに、ゆりかごの中にいるのではないのだから彼が何かに傷つくのはいつも通りのことかもしれない。
彼はいつだって、傷つきながらもそれを昇華しようともがいている。
そうやって成長していく彼も、私の好きなものの一つだけれど。
わかっている。でも。

彼を傷つけるものなんて、みんな死んでしまえば良いのに。

・・・あぁ、そうすれば、私も死ななければならないか。

「?」
微笑む私に、彼が曖昧な笑みを浮かべる。
次に会う時は。
「ケーキでも、焼こうかしら。」
貴方が美味しいと言ったヨーグルトクリームのレシピを遣って。
すると彼は、それなら、美味しいお茶を探してくる、と目を細めた。
こういう会話が好きだ。
こういう約束が、好きだ。







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『退廃的な夢を見た』(オリジナル)


死んでいく。

何が?

全てが。

すれ違う人間の肌は白くて、赤じゃない、青い色をしていた。
億劫そうな目蓋から覗く目は濁っていて、何の為に開いてるんだと疑問に思った。どこも見てやしない、焦点の合わない目で。
雲ひとつ無い空はなんだこれ、モノクロ映画かよと思った。でなけりゃ見たこと無い。
灰色の空なんて。青はどこへ行った?
地面のアスファルトはぼろぼろに風化して砂になっている。
そんなことってあるんだろうか。歩く端からぽろぽろ崩れていく。
風なんて湿度0%で、カラカラで、コンクリートの建物を、これまた片っ端から砂に変えていくんだ。
いい加減にしてくれ。
何も生きていやしない。
いや、未だ死んではいないんだが。
未だ死んでいないだけで、もうほとんど死にかけている。

空には雲ひとつ無いが太陽は地面を照らさないで、灰色で、何も持っていない風は壊して奪って去っていくけどすぐにそれを取り落として、(そして同じことを繰り返して)、コンクリートやアスファルト、初めから味気の無かったモノ達はいよいよ形を失っていく。
いつ倒れてもおかしくないような顔で歩く人間。心があるのかどうかも疑わしい。

そんな夢を見たんだ。
君がいなくなった夜のことだ。

これは、間違いなく悪夢だろう。






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