ようやくたどり着いたのに、圧迫感(ストレス)に吐き気がする。めまいがする。

辿りついてしまった。



クロードは再び降り立った。自分の生まれた場所へ。
広大な土地を白壁と緑が覆う。
計算され、手を加えられた緑の陰に身を潜めながら、彼は小さく溜息をついた。

実のところ、戻ってきて何をする、という考えは彼にはなかった。それなら何故、危険を冒して此処まできたのか。
・・・それは、衝動でもあり、意地でもあった。決して冷静な判断とはいえないだろうが、そんなものは知ったことじゃない。
そもそも、エデンたちがアテになりそうにない以上、きっと此処に帰ってくる以外にない。
だけど。
「・・・!どこから入ってきた!」
やっぱり浅はかだったかなぁ、なんて、この数日で何度思ったか。
本来自分を守るべき刃を向けられながらも、それでもクロードに自分の衝動を否定する気は沸かない。
そういえば前回、傷を負いながらも、命あったことそれ自体が奇跡だと思えたことを思い出す。
コンディションは前回よりはいい。しかし、そう何度も奇跡が起こるものだろうか。
唯一の救いは、自分の体が小さく、ある程度危険性が少なく見えるため、あまり増援を呼ばれないことだろうか。
しかし手放しで喜べないのは、現実のクロードの能力が見た目相応だということだ。衛兵は目測の通りに、効率のよい仕事をするだけである。
(・・・なんて、考えてる暇、ないか)
クロードは決して、退治されるために戻ってきたのではない。
踵を返し、せめて隠れようと走るが、やはりこの庭は計算されている。想定されている侵入者は人間だが、それよりも小さな体躯をもつクロードにとってもこの庭は不自由だ。
(なるほど、こんな檻に、俺は護られていたわけだ。)
有り難く、忌々しいことといったらない。

「待ちなさい。」
スタミナ切れを覚悟でスパートをかけようとした刹那、聞き覚えのある声が制止を命じた。
多分、それはクロードに掛けられた言葉ではない。それでも、思わず、自分の状況も忘れて立ち止まり、振り返った。
(義母さん)
懐かしさに、吐息が零れる。
クロードには義母(はは)と呼べる女性が多くいるが、彼女、シェリアは現王の第三妃。彼女に子どもはいないが、クロードの母親と歳も近く、またそれなりに仲もいいため、クロードにとって近しい女性の一人だった。
「シェリア様」
「傷つけるのはやめなさい。可哀想でしょう?」
(・・・・。)
「しかし」
「タグがついているわ。どこかから逃げ出したんでしょう。保護して、連絡を取るわ。いいわね?」
「承知いたしました。」
武器を収め、なにやら打ち合わせを始める衛兵達。クロードはそれに目も向けず、立ち止まったままでシェリアを見上げる。
『義母さん』
言葉が届くはずもない。彼女の眼差しはよく知った優しいものだが、しかし、義理の息子を見る目ではありえなかった。







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