「あの人の行方は?」
ティーポットを傾けながら、怜悧な声が室内の空気を打つ。
大人と子どもの過渡期にあるような体躯の少年が、しかし誰よりも毅然として存在している。召し仕える誰もが、そこにひざまずく。
「・・・未だ知れず、か。」
「恐れながら・・・。」
一人が畏まって告げると、彼は静かな静かな冷笑を浮かべる。
「仕留め損なったか・・・。何にしろ、城内に居ないなら同じこと。
 兄様が居ないなら、その次は僕だからね。」
至極愉快そうに、笑う彼の声だけが、その室内の音だった。








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「気のせいだといいんだけど。」
白いテーブルの上にひじを付いて、エデンは頭を抱えた。
「だってそうだろう?理論的には問題はないよ。全くね。
 でももっと、別の問題だ。倫理の問題。
 今私にとって遺伝子工学は畑違いだけど、もし私がそっちに従事していたとして、興味を持たないはずがないとも思う。
 でも、それとこれとは話が違うんだ。」
「・・・気のせいだと、思いますよ。
 どちらにしろ、決定付けるにはデータが足りませんから、先入観で結論とするわけにはいきませんが・・・。」
「うん。」
頭を起こして、もう一度、データファイルを手にとって目を通す。
「合成獣(キメラ)に、人間を使うのは禁止されてる。」
「はい。」
「・・・だったら、こんなデータは出て欲しくなかったな・・・。」
ぱさり、と投げ出されたファイルがテーブルの上に落ちた。
「もう、謎だらけで困るね。リチル君には。」
楽しいからいいけどね。そう嘯くエデンは、いつになく困惑した表情で、視線を明後日の方向に遣ってこれからのことを考えている。
研究は好きだ。研究は楽しい。
新しいことが解った時は、いつだってドキドキする。
良い事でも、悪い事でも。








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