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幸せってなんだろう? 「例えば、俺がこの手に持つリンゴ飴・・・。無条件でお前に差し出すと言ったらお前は幸せか?」 不意に言ってジュリアはつややかな光沢のリンゴ飴をちらつかす。 シードルは呆れ顔だ。 「別にどうでもないよ・・・。特にそれほどリンゴ飴が好きなわけじゃないし、なにより・・・ ジュリアから無条件・・・・っていうのは怪しくて仕方ない。」 「しかし、だ。もし、リンゴ飴が好きで好きで好きで・・・三度のメシがリンゴ飴でも差し支えない、むしろ望むところな、 なおかつ俺・・・ジュリア・コメットの素性というものを全く知らない、 あまつさえ今世紀最大最高最強の善人だと信じきっているやつがこの申し出を受けたとしたら、どうだ? そいつは幸せか?」 「何だそのツッコミどころの多すぎる仮定は」 「何を言う。仮定というものは無限の可能性を秘めてるんだぜ?」 「そんなことはどうだっていいよ。」 いささか、ジュリアの弁は熱を帯びているが、周りはというとどうでもよさ気で。 ジュリアはつまらなそうにぐるぐるリンゴ飴のリンゴの部分を回した後、少し考えてそれにかぶりついた。 今日は男女別の部屋を取ったから、男部屋にはジュリア、シードル、カシスの3人だけだ。 そのうち、カシスはやる気なさげで、疲れた風に完全に枕に顔をうずめて突っ伏した状態でいつ寝てもおかしくない状況。 今のところはまだ起きていて時々思い出したようにコメントを入れたりはするものの、今日も突発的に始まったジュリアの語りを、身を入れて聞いているのはシードルだけだ。 なおかつ、シードルもあまりノリ気ではない。 「それよりも僕が気になるのはそのリンゴ飴の入手ルートなんだけど。」 「もうないぜ。これ一本だけだ。」 「・・・いや、そうじゃなくて・・・」 「じゃあ、シードル、お前にとって幸せって何だ?」 「・・・。」 ジュリアは自分の都合に話を合わせることを躊躇わない。 シードルもカシスもそれについては熟知している。いやというほどに。 「・・・それは、さっさとこの冒険を終わらせて、家に帰ることさ。」 「成る程。カシスは?」 「・・・・・・・んあ?」 カシス、鈍い声色。意識が飛んでいたらしい。 「・・・・呼んだか?」 「・・・いや、寝たかったら寝ろ。」 「・・・・・。」 「・・・・。」 「誰かが幸せに感じることも、誰もが幸福と思うわけじゃない。 誰かの幸せが誰かの不幸かもしれない。 視点を変えれば・・・苦痛も悲愴も、『生きている』だけで、幸せだといえるかもしれない」 不意に訪れた沈黙なのかで、誰にともなく、小さく呟くジュリアの声。 静寂に包まれたその部屋の中では、よく響く。 「・・・つまり?君が、言いたいのは?」 ジュリアの投げたスティックが、放物線を描いてゴミバコへ入る。 「あいつ・・・。あいつらは、自分が不幸せだと、思っている。」 ジュリアの言うあいつら、とは、先に奥へと行ってしまった・・・ガナッシュとキャンディのことを指しているようだ。 その話か、とようやく得心がついたようなシードルだが、だからといって何も気分は変化しない。 「・・・・。」 シードルは疲れたような嘆息をして、ごろん、とベッドに寝転がる。 「だから、それをどうにかしたくて・・・俺たちを結果的に、巻き込んでいるんだ。 知ってかしらずか。」 「・・・。」 「あいつらの幸せはなんだろう?」 「まさか・・・ジュリア、止めない気?彼らを。彼らのために。」 「まさか?」 ジュリアは、静かに笑う。 「んなワケないだろ。当然、連れて帰るさ・・・。 他でもない、俺自身のためにな。」 くくっ、と笑うジュリアの表情は、心成しか楽しそうだが・・・。 なんとなく、やるせないような、そんな印象もある。 シードルは天井を見つめる。 「俺はそれが幸せだと、信じてるんだ。」 誰の?と、訊きかけたが、やめておいた おそらく、ジュリア自身もわかっていないだろうから。 戻る |
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