+音楽的に100のお題 041〜050 +



041  mezza voce (メッツァ ヴォーチェ * 声をおさえて)

イキヲコロシオトモナクタダマツトキノスギルノヲ
『息殺音無唯待時過』(MV)


   音を立てるな

ジュリアが地面にそう文字を書いた。
土色に汚れた人差し指を親指で数回擦って、交わすアイ・コンタクト。

どこか近くに敵がいるのはわかっている。
・・・敵、とはなんとも物騒な言葉だ。温室育ちを自覚しているシードルにとっては縁をもちたくない嫌な言葉だけれど、生憎と他に言葉がないから仕方ない。
モンスターか否かもわからないのだから。こういう抽象的な言葉に頼る他にないのだった。
ともかく、一方でジュリアはそれ、について正体はともかく、位置を把握しているらしい。
こういうときのジュリアは平静を保って、ポーカーフェイスでいるのでそこから詳しい情報を得ることは難しいけれど、相当近距離にいるのではないだろうかと思う。
それから、ジュリアの体勢から、真っ向勝負を挑むのではなく、できればやり過ごしたい、と思っているようだ。
伊達に長い付き合いをしていないからそこのところはなんとなくわかる。
こういう一体感もいいものだ。こういうシチュエーションでなければ。

小さな吐息が空気を揺らした。
時の存在を重く感じる。
いわゆる敵、の、位置も正体もわからないから不安はより大きいし、体も必要以上に緊張してしまってすっかり強張っている。
でもこういう時、自分の感性より、ジュリアのまさに戦闘向きなそれに従ったほうが確実で賢明なのを知っているから、指示通り声も出さないでじっと動かないで、ジュリアの様子を注意深く窺っている。
訊きたいことはたくさんある。
声以外に伝える方法はある。例えば地面に書くとか。
でもこういう時、わざわざそうまでして今、訊く価値があるのかどうか考えてしまう。
もし自由に声を出していいなら、矢継ぎ早にでも訊いているかもしれないことを。
大切なことだけ。
本当に大切なことだけを、静かに、できるだけ音を立てないように地面に書くのだ。

あとどれくらいこうしていればいい?
―そんなこと、ジュリアにだってわからないだろう。

相手は一体何者?
―これだって、ジュリアが知っているかどうか。

今、どこにいる?
―気配を追うこともできないのに、そんなことを聞いても意味がない。

君を信じていいの?
―・・・信じるしかないだろう。今は。

澱んだ時が流れていく。

地面に書かれた凹凸を消して、ジュリアが不意に立ち上がった。
それから、小さなジェスチャーでシードルも促されるまま立ち上がる。

「今だ・・・。走ろう。」

低い、小さな声が耳元で流れた。



モドル




042  con fuoco (コン フォーコ * 火のように)

coming soon...




043  giocondo (ジョコンド * おどけて)



『マトリョーシカの白い夢』(MV)



残念でした。



もう一回。



「最近夢見が悪いんだ」

うんざりしたようにぐったりと机に突っ伏した状態でシードルが愚痴る。

聞き役のカシスはお行儀悪く机に腰掛けた状態で、そんなシードルの髪を玩んでいる。

即座に突っぱねられるかと思いきや、意外にもシカトされているのでご厚意に甘えさせてもらっているわけだ。

「なんかね・・・・。」

勝手に語るシードルの話を、カシスも勝手に聞く。



あたり一面白い大地だ。

とはいってもそれは新雪の白さではなく、

大地が凍結したような、氷の白さ。

反対に空はこれでもか!というほどに青い。

雲ひとつないまさに快晴というやつだ。

それはそれで絶景なんだけれど、

なんだかひどく不安になる。

だってそこには自分ひとりしかいない。

地平線に果ても見えない。

どういうわけだか半べそな状態で、歩き回っていると、

ど●でもドアみたいなドアがその中にぽつん、とあって

なぜだかそれに安堵して、縋るように扉を開けるのだけど。



残念でした。



もう一回。



扉を開けても変わらない景色。でも扉を見つけるたびに扉を開く。

それを繰り返していると、突如、変な物体が現れて、そう言うのだ。



「それがおっそろしくムカつくんだよね〜・・・」

不機嫌なシードルの鋭い目と視線が合った。

「な・・・なんだよ」

俺は何もしてない、と言いかけて、思い直してカシスはシードルの頭から手を退けた。

「ムカつくし疲れるし、起きた時なんか寝た気がしないっていうか・・・」

「そりゃあ大変だなぁ。」

「・・・でも、割と可愛いんだよ。あの物体。」

「へぇ?物体が?」

「なんか憎めないっていうか・・・。憎たらしいけど。」

「・・・疲れてんだよ。お前。」

「・・・そうかもしれないね・・・・。」



残念でした。



もう一回。



残念でした。



もう一回。



終わりがないわけ、ないじゃないか。



諦めないでよ。待ってるんだから。





道楽に付き合う義理はないが



本当はちょっと気になっている。



あの物体の、正体が。





モドル




044  pietoso (ピエトーゾ * あわれみ深く)

coming soon...




045  segue (セグエ * 続く)

coming soon...




046  rustico (ルスティーコ * 田舎風に)

coming soon...




047  smorzando (スモルツァンド * 消え入るように)

coming soon...




048  tanto (タント * たくさん)



『私を置いてどこへ逝くの』(MV)





「何やってるんだ?シードル。」

カシスは、木陰にうずくまってじっとしている級友に声をかけた。どことなく哀愁の漂う姿はいささか珍しい。

シードルはゆっくりと振り返って、気だるげにカシスを見る。知りたければ頭働かせて考えろ、と言わんばかりの眼差しで。

仕方ないからシードルに歩み寄り、同じ目線で物を見た。

シードルの前に土を掘り返した跡、それから手作りの墓標が立っていた。

「コッコが死んだんだ。」

唐突に出た知らない名前も、容易に察しがついた。

その安易なネーミングと、それからシードルがニワトリの飼育係である事から。

朝、餌をやりに小屋を覗いたら、曰く冷たくなっていたらしい。

「ねぇ、カシスは。」

「ん?」

「ニワトリが先だと思う?タマゴが先だと思う?」

「・・・・・は?」

・・・たしかにそういう論議はあるけれど。

何故それを今聞く。

「世界中にニワトリなんて幾らでもいるんだよ。」

答えを待たずに次を喋る。

少しだけこんもりとした土を、撫でるように叩くシードルの手。

コッコとかいうニワトリとそんなにも心を通わせていたのか、という意外性より、悲しそうに見えるシードルのしおらしさの珍しさの方がカシスには大きくて。

カシスはじっと黙っている。

今この時だけは。

世界中のどのニワトリよりも、コッコは幸せなんじゃないかと思った夏の朝。





モドル




049  vibrato (ビブラート * 震えた)



『絶叫』(オリジナル)





独りでここまで歩いてきました。

一つ一つ刻む足跡がそのまま生命の軌跡。

縮まる距離がそのまま残された時間。

一途な足跡はいっそ滑稽にも思えます。



独りでここまで歩いてきました。

1人ではここまで来れませんでしたが、それでもいつも独りでした。

・・・・違う。

あらゆる手を振り払って孤独を造ったのは自分自身で



 絆が心だけをこの世に留めてしまうことを恐れた





独りでここまで歩いてきました。

ここまでの道のりは本能に刻みついていて初めから知っていました。

だからその通りに歩いてきました。

何度か立ち止まったこともあります。

引き返そうかと後ろを振り返ったこともあります。

何度も何度も泣きました。

出会いがある度泣きました。

それはそのまま別れの回数。



胸が痛くなるんです。

呼吸ができなくなるんです。

命は全て死ぬ為に生まれるとしても、

それを自分の意思で迎えなければならないという特殊。

真っ直ぐに目を逸らすこともできずにそれだけを見つめながら歩き続けなければならない宿命。

独りで歩き続けてここまで来ました。

死ぬためにです。

そして新しい命はその時に生まれます。

そのために終わるのです。



この命は。





本当の気持ちは何度も押し込めて、何度も溢れ出ました。

本当は

生きたいです。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと・・・・・

生きたいです。

生きたい。

イヤだ

死ぬのはイヤだ

生きたい

イキタイ

消えてしまうのはいやだ・・・・!

無感の無音の果てしなく深い暗闇に

囚われて

蝕まれて

永遠に

永遠に



そんなのは



いやだ・・・・・・・・!!!



どうして

ドウシテ





ねぇ

なんで・・・・・・・・・!!??





失いたくないよ



記憶も

感情も

幸せも

痛みも

苦しみも

喜びも



自分自身を



生きているということを!!!!!!



  湧き上がる想いを



  震える体を抑えたくて抱き締めるそれは



  一番頼りにできない自分の体





モドル




050  staccato (スタッカート * 短く切って)

coming soon...





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