+音楽的に100のお題 091〜100 +
091 scherzando (スケルツァンド * 戯れるように)
『愛い愛い俺の3番目の名前』(オリジナル)
「ヨーク。」
彼女の部屋で一夜を過ごした朝。こちらを目を細めて見つめていたナターシャの呼びかけに、俺は食事に俯けた顔を上げた。
「おいしい?」
続けてはにかむように紡がれた言葉。俺はなんだ、そんなことかと朝食を続行する。
咀嚼を続けながら時折ちらちらと彼女の顔をうかがったが、穏やかな表情が崩れることはない。
職場の都合で親元を離れ、一人暮らしをしている彼女は、多分寂しいのだろう。
自惚れではないが、俺が訪れた日の彼女は、とても幸せそうな顔をする。俺も、彼女の部屋は暖かくて好きだ。
食事を終えて、もう一眠りでもしようかと思ったときに、不意に窓の外の陽光に目を奪われる。
あぁ、まるで誘うように。
フローリングを焼く、やわらかな温度。
彼女の香りがするこの部屋にも、仄かに太陽の匂いが混じる。
隣家の木の葉がさらさらと揺れるのを見た。
「もう行くの?」
奪われた瞳の先に気がついたのか、彼女は少し、名残惜しそうな顔を見せる。
確かに、それもよかったが、俺は応えた。
彼女が開いた扉に、俺は部屋を後にする。
上空を横切る鳥の影に、空を仰ぐ。
どう贔屓目に見ても、届かない。そもそも追いつけない。
それと同時に目に這入る、空の青さ。
足を止めて、腰を下ろす。そうすることで、より緩やかな風を感じられた。
首が疲れた俺の前を、手を繋いだ親子が通り過ぎる。
「あ。」
幼い女の子が、俺を見た。
お母さん、と母親を呼ぶ。母親は俺を見、そして少女に笑いかけた。
繋がれた手を解いて、ゆっくり俺に歩み寄ってくる。そうしながらも、何かを考えているようなそぶりで。
「みぃこ!!」
ひらめいたように、嬉しそうに俺を呼ぶ。
ふざけんな!俺はオスだ!
なんて言葉が、人間様に届くわけもない。
少しだけ恐る恐る、俺の頭をなでる小さな手は優しく温かく。
その手に鼻を擦るようにして、俺はゴロゴロと喉を鳴らした。
モドル
092 religioso (レリジオーゾ * 宗教的)
coming soon...
093 amoroso (アモローゾ * 愛情を込めて)
『じゃぱにーずかるちゃ』(MV)
ホカホカに炊き上がったご飯に、合わせ酢を均等に混ぜ、冷まします。
「分量間違えるなよー。」
「はーい。」
酢と砂糖と塩を、適量混ぜたものが合わせ酢です。
シードルが酢の係。カシスが混ぜる係。ガナッシュがうちわ係。
ムラにならないように、冷ましながらしっかり混ぜます。
「結構力仕事だねー?」
酢の係の仕事はすぐに終わります。
「・・・こんなもんだろ。」
味見係が味見します。
「あー、こんな感じ。」
OKがでたら、具を作ります。
具はお好みで。
例えば今回は、しいたけ、にんじん、錦糸玉子・・。
しいたけは干ししいたけを水で戻し、戻し汁に醤油、砂糖を加えて火にかけます。
「甘めがいい」
「濃い目がいい」
「・・・いや、薄めで。」
「えぇー・・・。」
好みに合わせて調整しましょう。
にんじんは切って茹でます。
「・・・それ、でかくないか?」
「好き嫌いするなよ。」
卵はよーくときほぐし、味付けをして薄焼きにします。
「すごい!薄い!しかも破けてない!!焦げ目ひとつついてないっ!!」
「ガナッシュ才能あるねぇ〜・・・。」
「・・・そ、そうか・・・?」
それから、細切りにします。
しいたけも切り、にんじんと一緒に先程の酢飯に混ぜ込みます。
それから、最後に全面に玉子を降りかけて・・・・
「できたー!!」
「おー、なんとかなったなー。」
「さて・・・。献上しにいくか。」
できあがり!
「できたよー。」
「あ、お疲れさまー。」
「できたの〜?あ、おいしそう〜」
みんなにお皿を配って、楽しく食べましょう。
今日は女の子のお祭り。
モドル
094 capriccioso (カプリッチオーゾ * 気まぐれに)
coming soon...
095 piacevole (ピアチェーヴォレ * 気持ち良く)
coming soon...
096 rapidamente (ラピダメンテ * 急いで)
『ランニング・ハイ』(MV)
はやくはやくと声がする。
「どこまでっ、行くの・・・っ」
金色の髪が美しい精霊が、振り返った。
空のような色の宝石が、ちかりちかりと輝きながら、精霊の周りを巡っている。
『・・・。』
逡巡するようなそぶりを見せて、精霊はまたふいと浮遊を続ける。
「・・・っ、待って!」
また、鬼ごっこが始まった。
遊ばれているのだろうか。追いかけるのをやめればどうして来ないのかとせっつかれ、
それからは延々と逃げられ続ける。
「何処に行くの・・・っ?」
尋ねても、何も答えはしない。
ただ、何かの意志はあるようにふわふわと先へ行ってしまう。
「パウダー!」
『・・・。』
ぐん、と、パウダーの速度が上がった。
そして、坂道の頂上で、ふわふわとこちらを見下ろす。
「・・・?」
息を切らし、何とかかけ上って呼吸を整えていると、ふわり、とパウダーが周りを巡る。
「ここ、なの・・・・?」
顔を上げて、
息が、止まった。
見晴らしのいい、その景色の中に、禍々しい紅蓮の炎を見た。
「これ・・・っ、大変!
誰か・・・」
限界を告げる足を叱咤して、駆け出そうとした目前にパウダーが立ちふさがる。
ふるふると、首を振って。
「どうして!?
どうして僕を・・・!」
パウダーは何も言わず、ただ何処へも行かすまいとしている。
「どうして・・・・?」
煙の上がらない不気味な炎を、愕然とただ見つめていた。
モドル
097 ed (エ * 〜と共に)
『器』(オリジナル)
僕らには名前がひとつしかない。
「ドール、今日もおとなしくしてた?」
眠りに落ちかけた寸前で、声がしたから無理矢理に覚醒した。
暗がりの中、射す光の筋の中に長い影が伸びる。
「はい、お母様。」
自然に笑みがこぼれる。光が眩しくて、その表情は窺えないのだけれど、見なくても分かる。
大好きな人の声。
「お父様は今日も遅いのですか?」
「そうね・・・。今日も会えないかもしれないわ。
夜更かしは、ダメよ?」
「はい。わかっています。」
強い睡魔が襲ってくる。眠ってはいけない、と言い聞かせながら、光に慣れた目で、もう一度、母親の姿を確認する。
「ドール・・・。」
母親が、歩み寄る。それを察して、できる限り、母親に近づいた。
母親の腕が、ケージの柵の間から伸びて、優しく頭を撫でてくれる。
その心地よさに、柵に体重を預け、目を閉じる。
指の感触を感じながら、嬉しそうに口元を綻ばせる。
「眠いの?」
「はい・・・・。」
「そう、ゆっくりお休み。」
指が、離れる。名残惜しげに重い頭を上げると、母親は優しく微笑んだ。
「また、明日ね。」
遠ざかる足音。そして、また真っ暗な闇に戻る。
「つまらないなぁ。」
「何を言い出すの?」
「なんでちゃんと起きとかないんだよ。
そうすればもうちょっといてくれたかもしれないのに」
「そんなこと言ったって・・・」
「どうだろうね。あのヒト、本当は僕らなんかどうでもいいんじゃない?」
「なんでそんなこと、言うの?」
「じゃあ、僕らは愛されていると思う?」
「・・・・・。」
「なんでこんな所に閉じ込められなきゃいけないの?」
「・・・それは、僕たちのためだって、」
「僕らが子どもだからって、いい加減なこと言ってるだけだって。」
「そんなことないよ・・・。」
「あー、もう、そんなことどうだっていいだろ?
もう寝よう。眠いんだから・・・。」
「・・・・でも・・・・・。」
「疲れたんだってば。だってホラ、今日は」
「あっ」
「?どうかした?」
「報告するの・・・忘れてた・・・・。
僕らが、もうひとり増えたって。」
「・・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・いいじゃん、別に明日だって。」
「そうだよ。なんだったら、明日増えたことにしちゃいなよ。
もうそこら辺、どーでもいいじゃん?」
「・・・そうだね・・。」
「まぁ、そりゃそうだな。」
「もー、僕もう先に寝るからねっ」
「えー、一緒に寝ようよ。」
「無理だって。もう寝てるヤツいるし」
「いつの間に・・・ッ」
「なんか、アレだな。うん。ま、いいや。寝よう。
おやすみ」
「おやすみ」
「みんな起きないでね。休まらないから。」
「わかってるよ」
「おやすみ」
「おやすみー。」
たった一人のケージの中で、たくさんの『僕』が笑いあう。
ただひとつの名前をわけあう、
僕たちは運命共同体。
モドル
098 con moto (コン モート * 動きをつけて)
coming soon...
099 delicato (デリカート * 繊細に)
『最後のアトリエ』(MV)
「シードル」
「シードル」
「シードル」
やめてよ
静かに走った。
息を潜めた。
憂鬱に陰鬱にため息をついた。
うるさいなあ
こないでよ
愛でるような声。
鬱陶しい声。
抱き締める腕。
撫でる手。
優しい笑顔。
うららかな笑顔。
構わないで
放っておいて
一方的な鬼ごっこ。
僕はひとりになりたいんだ
腕が届かないところまで。
声が届かないところまで。
秘密の場所に沈みこむ。 静寂をひとり、抱き締める。
寂しくなったら、帰ってくるから
僕をひとりに、しておいて。
モドル
100 spiritoso (スピリトーゾ * 精神を込めて)
『last emotion』(MV)
纏わりつく空気。その重みに縛られているような錯覚。
心を挫く圧迫感。
「よし、とりあえず深呼吸しようか。」
ジュリアが気の抜けるようなことを言った。
「・・・それ、今じゃないとだめ?」
「ん、それは遠回しに拒絶してるな?まぁ、無理強いはしないが。」
するとジュリアは、一度だけ、深呼吸をする。
そうしていると、まるでため息みたいだった。
これが、本当に最後の戦いになる。
ケルレンドゥはさっきの肥大した緑色の生物から更にグロテスクな形状となって目の前に立ちはだかる。
ここで逃がしてはいけない。
死と転生を繰り返すエニグマを『討つ』手段は、一つ。
死のプレーンで、殺すこと。
「愚かな・・・」
ケルレンドゥは、嗤(わら)う。
「死のプレーンで死ぬことが、どういうことか・・・」
死者の死は、魂の死。
輪廻からの追放。永劫の沈黙。
完全なる『消滅』。
「思い知らせてやる!!」
怖い。
もちろん、怖い。
「ここまで来た、自分を信じるんだ。
俺たちの魔法は、絶対にあいつに届く。」
「言われなくても。」
これが、最後の一仕事。
みんなで、帰ろう。
「行くぜ―」
その手のひらに、渦巻く魔法。
それに全ての心をこめて。
81〜90へ
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