+音楽的に100のお題 001〜010 +
001 Andante (アンダンテ * 歩くような速さで)
『そのスピードで』(MV)
物理の授業で習った、それほど関心があったわけではないが引っかかるようにして憶えているあの法則のようだと思った。
初歩的にして絶対な宇宙の大原則。
動き始めたモノは止まらない。
それを妨げるものがない限り。
ソレが適用されるのはなにもフィジカルな面だけではなかったようだ。
走り出した想いさえ。
歯車は廻る。
周りの大気、ソレとかみ合った何かを巻き込みながら。
動き出した唯一つが、やがて世界をも動かし始める。
「ガナッシュ」
頼りなげな手が腕を引いた。
振り返るとそこには不安げな面持ちのキャンディ。
「早く、行こうよ。」
ガナッシュはキャンディのことはよく知らない。
それはキャンディに限ったことではなくて、概ねほとんど全ての人間について・・・そのごく僅かな例外のうちに、姉であるヴァニラが入るわけだが・・・ガナッシュは無関心を通してきた。
それでも、おぼろげな記憶を引っ張り出せば、キャンディはよく話し、よく笑うようなそんな子だったように思う。
でも。今実際目の前にいるこの小さな女の子は、笑うどころか、哀しそうで、苦しそうな表情ばかりしている。
「ガナッシュ?」
顔をそちらに向けているだけで、返事も反応もしないガナッシュを、急かすようにもう一度呼んだ。
「皆に、追いつかれちゃうわ」
腕を掴むその手に力がこもる。ガナッシュは・・・その言葉を静かに反芻した。
・・・・そうだ。
「ガナッシュ・・・?」
その時のキャンディの表情で、自分が笑っていることに気づいた。
手を口許に運ぶと、確かにそれは笑みの形を作っている。
お節介でお人好しなクラスメイトは、今必死で後を追ってきているのだろう。
歩き続けるガナッシュの行く手を妨げるべく。
そうやって、追ってくればいい。
歩き続けることをやめはしない。この体が内包するものに、それをやめさせるだけのものは存在していない。
だから追ってくればいい。
全力で・・・。これ以上、堕ちていくのを止める為に。
何も考えないで捨てて置いてきた本当は大切なものを、もう一度振り返って見つめられるように。
歩き続けることをやめはしないが、お前たちを待っている。
絶えず加速しながら、ぶつかってつまずいて絶えずそのスピードを殺されながらも、なお加速しながら真っ直ぐに向かってくる、
そうやって追いついてくるのを。
ただ少し分の悪い彼らのために、
唯歩き続けよう。歩くような速さで。
もういくらもないこの道の果てまで、天国のような地獄のようなその道を、その身の内に潜むおぞましい魔物に怯える小さな手を引いて、楽しみ歩くのも悪くはないだろう。
加速したい本能に逆らい、それでも先へと進むことを阻むことのできなかった小さな小さな感情が、
縋るようにして、それでも確かにこの速度を保たせている。
―Andante―
モドル
002 poco a poco (ポコ ア ポコ * 少しずつ)
coming soon...
003 legato (レガート * なめらかに)
comming soon...
004 breath (ブレス * 息つぎ)
『隣にいます。』(MV)
こんなに広い世界の中で、
隣り合う君との僅かな距離。
当然のように静寂と沈黙が流れてゆく。
ガナッシュはハーモニカを吹くのもやめてぼんやりと俯いている。何か取り留めのないことを考えているのかもしれないし、柔らかな日差しが川面できらめいているのをじっと観察しているのかもしれない。
どっちにしても、こちらは向いていなかった。
まるでお互いを拒絶しているような長い沈黙を、今は享受する。
この距離が本意ではないはずのガナッシュは、こちらが飽きて諦めて去っていくのを、静かに穏やかに待っている。
まるでそれが当たり前かのような静寂。
だから同じように、ガナッシュに飽きてしまうのをここで静かに待ってみる。
風が気持ちいいから。きらりと光る川面が綺麗だから。
冬枯れの赤茶けたその色の中に、新しい緑を見出したから。
優しい沈黙の中に、温かな気持ちを感じられたから。
ここを離れる理由はない。少し眠い、そんな心地。
ハーモニカの音色が流れて、目を閉じて耳をすませる。
何故だか嬉しくて小さく笑った。
モドル
005 cantabile (カンタービレ * 歌うように)
coming soon...
006 brillante (ブリランテ * 輝かしく)
『ほの暗い流星』(MV)
眠たい瞳を、刺すに至らない沢山の光。
つまりは満天の星空。
「何をやってるんだろう、僕は・・・・。」
「やめとけ。考えるだけ無駄だ。」
空を正面に、大地を背中に。
夜は休息の時間だ。
シードルは野宿を歓迎するタイプの人間ではない。
カシスだって、「こう見えて結構繊細なんだぜ」とか言って、さっきから寝返りばかり打っている。
ジュリアなんかはいつでもどこでも3秒で眠れるなんてうそぶいているけれど、今はきっちり起きている。疲れているはずなのに。
「星がきれいだね。」
シードルがぼんやりとつぶやいた。常套句だな、とジュリアは歯牙にもかけない。
「星に手が届けばいいのに、って思ったことがあるよ。」
「よく聞く話だな。」
「でも、星に手が届いたら、空に星がなくなってしまう、って、思ったこともあるよ。」
「そうだな。1等星だとか、見栄えのいいやつからどんどん取られていって、随分夜空が寂しくなるな。」
「そうしたらきっと、星を取ることに規制がかかってしまうかもしれないね。明るい星ほど値段が高くて、一般市民はせいぜい暗い6等星ぐらいしか手にできないのさ。
あるいは、星の取り合いで戦争が起こるかもしれない。」
「宇宙暦から考えて、人間の歴史は一瞬みたいなもんだ。その間に星はそう沢山は生まれないだろうから、実質星の数は有限だ。無駄使いしてるとあっという間になくなるぜ。」
「・・・なぁ。話についていけねぇんだけど。」
風の音。虫の鳴く声だけが透き通るように響いている。
そんな一瞬の間。
「話の腰を折るなよ。折角夢の話をしてるのに。」
「もっと夢らしい夢の話はできないのか?」
「難しい注文だね。」
涼やかな風が吹く。暑くもなく、寒くもなく、眠気を誘うような風。
それでも起きている。
所在なさげに星を見つめる。
「なぁ。願い事しようぜ。」
「・・・なんで?」
瞳がジュリアを向く。
ジュリアは星を見上げたままだ。単に寝転んだ頭を動かすのが億劫なだけだけど。
「夜って、結構広いんだぜ。」
「・・・・また何かわけのわからんことを・・・」
「まぁ、夜は、広いんだ。そのどっかで、流れ星が落ちてるかもしれない。」
「・・・流れ星?」
「それにあやかろう。」
「僕らには見えない流れ星に願い事するの?」
「願うだけならタダだ。」
「・・・なんだかなぁ・・・。」
見上げる夜空はすごく静かだ。何億光年も向こうで、星が燃える音はここまで届かない。
「・・・無事に皆で帰れますように。」
「エニグマに負けませんよーに。」
祈りの形に組んだ指は、丁度心臓の真上にある。
願うこと。つまり、目標の再確認だ。
「明日は宿が見つかりますように。」
モドル
007 grottesco (グロテスコ * 怪奇な)
『シグマは奇妙なモノを見つけた!』(MV)
「なにこれー!?」
シードルの大きな屋敷に、シグマの絶叫がこだました。
至近距離にいたシードルは、びっくりしたし耳はキーンとなるし、頭は一瞬真っ白になったし、迷惑この上ない。
「なにこれなにこれっ!!キモいっ!!」
「お、落ち着いてよ・・・・。
一体どうしたのさ・・・、ゴ●ブリでも出たの?」
「違うッ!これっ!!」
シグマは半分涙目で、指を指した。そこには・・・・
「ああ、それはデッサン人形だよ・・・。」
「いやだー・・・。不気味ー・・・」
「シグマ、こういうの嫌い?」
「っていうか、なんかもしかしたらひとりでに歩いてここまできたのかなとか」
「考えすぎ。」
「・・・・・。」
シグマはぶーたれている。
人と同じ等身で、肌色で、顔がない人形だ。
シードルは特に考えたことはなかったが、不気味に見えなくも・・・ない。
だからってそんなに絶叫することもないだろう・・・。
「漫画家とかも使うんだよ。」
「へぇ〜、そうなんだ・・・。
夜にさ、それがひとりでに動き出したら」
「考えすぎだって。」
「・・・・。」
シグマと人形はにらみ合う。(※人形に顔はついてない)
「モデルがいないときはそれで人体デッサンするんだ。」
「・・・・。」
シグマはちらり、とシードルを見る。
「じゃあ、私、役に立ってるんだ。」
シグマは勝気に笑った。シードルは・・・
「そう思う前に、真面目にモデルやろうね。」
「ハイ・・・・・。」
そうやってシグマがすごすごとモデル業(?)に戻ったところでようやく笑った。
モドル
008 possibile (ポッシービレ * 出来るだけ)
『怠け者のユートピア』(MV)
できないことはやりません。
何故できないのかは、わからないけれど
一歩さえ踏み出すことができればそのまま歩き続けることができるのに、その一歩があまりにも重い。
だから適当な言い訳をして目を背けて知らん顔をしている。
(本来の僕ならそれを蔑視しているはずなんだ)
むしろそうしているはずの自分こそが紛い物なのかもしれない。
綺麗事を並べるのは容易いこと。
初歩的な倫理観はちゃんと学んできたはずだから。
それでも結局のところ、それは机上の空論にすぎないというのは周知のことだ。
弱くてごめんね。
だからなんだ。何がしたいのかわからない。
わからないままでいたい。
一歩踏み出せば歩き続けることができるのに。
一人ぼっちをやめて、みんなを助けにいけるのに。
背中を押されないでも、自分で歩きはじめたいのに。
くだらない言い訳で陳腐な言い訳で適当に気まぐれにまるで知ったような口ぶりで、心なんてどこにもない乾いた笑いさえ浮かべながら嘲笑して自嘲して曖昧なまま心苦しいまま逃げている。
あぁ、なんて馬鹿馬鹿しい。これがもし、自分がもし他人だとしたら一笑して見下すだろう。
これは本当に笑い話か?
本当は駆け出したいくらいなんだよ。
背中を押されるでもなく手を引かれるでもなく、自分の意思で、決意を持って。
机上の空論のあまりにも美しいカタチが、枷になって重石になって、現実というものを醜く映す。
そんな、時間稼ぎの言い訳を
モドル
009 nobilmente (ノビルメンテ * 上品に)
coming soon...
010 senza (センツァ * 〜無しで)
『dusty rose』(MV)
いつの間にこんなに簡単に殺せるようになったんだろうね。
仕方ない。自分の身を護る為。
生きる為に殺すことは当たり前。
命の歴史はずっとそうやって紡がれてきたのだから。
殺すことを止めたとしたら、人間も、魔物も死に絶えてしまうだろうから。
命は命の為に奪われる。
生きたいから戦う。
戦って殺す。
当たり前だ。当たり前だけど
何も知らなかった、与えられるものだけを受け取って生きていられた
あの頃にはもう戻れない。
奪ったモノの重みを背負って生きる。
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