昼休憩。

ジュリアとシードルとカシスの3人は、他愛ない会話などしながら、

他の人のおかずを失敬しようとしてまんまと成功したり、失敗したり、叱ったり叱られたりしている。

何故揃いも揃って弁当持ちなのかといえば、ジュリアは学食に飽き(好き嫌いが激しく、食べれるメニューが少ない為だ)、

カシスは金欠で、シードルはその巻き添えを食った、という感じ。

BGMは音楽室から流れてくるピアノの音色。

これだけの大きな学校で、技術もあるはずなのに何故か、音楽室に防音対策は施されていない。

とはいってもさすがに授業中は、

担当の先生によって音が漏れないように配慮されているが。(音魔法の応用らしいが、難しくて3人にはまだ分からない)

ともかくそういうわけで、休憩中、生徒が好きに弾くときは音が駄々漏れになっている。

「今弾いてんのは・・・・アランシア・・・か?」

カシスの弁当箱から玉子焼きを奪取することに成功したジュリアが、風に乗る音を探るようにして呟いた。

アランシアに弾けない楽器は無い。ピアノに至ってはまさにプロ級。

澱みない滑らかな運指は感嘆に値する。

「でもクラシックって眠くなるよな・・・・。」

狙うようにジュリアの弁当箱を凝視しながら、カシスは誰にとも無く愚痴る。

「全くだ。この後の授業にこれ流されたら、俺絶対寝れる自信がある。」

す、とカシスが右手の箸を伸ばした。

ジュリアはそれを迎え撃ち、二組の箸が組み合って静止する。

静止しているがそれは静かなものではなく、押し押され、微妙に小さく震えていたりもするのだ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「何やってんのさ、二人とも」

メインのおかず、ハンバーグを狙われる前に食べ切って、シードルは呆れたように呟いた。

その時。

静かなメロディーの流れが途絶えたかと思うと、一呼吸遅れて、今度はたどたどしい、歪な音色が響きだす。

「ん・・・。急にヘタに・・・・」

「でも、曲目は同じだよ。」

「そうなのか?」

「うん。」

ちなみに、箸は組み合ったままだ。

シードルは箸をすすめながらも、その音色を聞いている。

そして、小さく笑った。

「・・・な、・・・どうした?」

「いいから、早く食べなよ。遊んでないでさ。」

「遊んでない。戦いの最中だ。」

「・・・・。」

そこでようやく、二組の箸は離れた。

「・・・・分かる?」

「?」

「聴いてみなよ。この人、黒鍵の前で必ず止まるの。」

「・・・んなこと言われてもわかんねぇよ」

「♯や♭ってクセモノなんだよね。どの音についてて、どの音についてないのか、

どっちが半音上がって、どっちが下がるのか分からなくなる。特に、習いたては。

黒鍵なんて無くてもいいなんて思えてしまうけど、でも逆に黒鍵だけで展開されるメロディーに出会うと妙に感動してしまうんだ。」

「・・・ねこふんじゃったとか?」

「うん。」

「俺もそれだけは弾けるな。」

たどたどしいメロディーと同じ旋律が、それよりも高い音で展開される。

すると、まだたどたどしいけれど、少し滑らかになった音が響いた。

「・・・これを教えるのはちょっと大変だぜ?」

「アランシアなら、優しく教えてくれるよ。」

弁当を完食して、シードルは手を合わせて片付け始めた。

「・・・・早く食べなよ。昼休憩、終わっちゃうよ?」

「取るなよ。」

「取らないよ。」

歪なメロディーは予鈴と共に止んだ




















+添え言+

誰か、シードルの意見に共感してくれる人はいないでしょうか。
そのまんま私の意見なワケですが・・・・。
それよりもこの題、初め黒い鍵(かぎ)だと思ってた。
・・・あぶないあぶない。









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