例えば、貴方が誰とどんな話をし、笑いあい、触れ合い、キスしようと構わない。



そんなこと、私には関係ない。



貴方の目に私が映らないのも、私の目に貴方が映らないのも、



あまりにありふれ過ぎた、当然。



たまに私の名を呼んで、ふざけたように笑うその表情が



特別なものじゃないことを、私は知っている。









扉を開けたら彼がいた。

「よぅ。ブルーベリー。何だ?サボりか?」

だらしなく背を壁に預けて、座り込んだままその手に握られているのは中身の見えない大きな袋。

ただし、中身は見えなくても、その中身を推測することは容易かった。

彼の周りには、お菓子の小さな包み紙が無造作に散乱している。

几帳面なブルーベリーはそれに顔をしかめたが、カシスは全く気にした様子もない。

「授業を取っていないだけよ・・・・。そういうカシスは、この時間体育じゃなかったの?」

授業開始時刻から、20分程経過している。カシスと同じく体育の授業を履修している親友のレモンの姿が、ブルーベリーの脳裏をなんとなく掠めた。

カシスは左手を袋に突っ込んで、中身を一つ取り出し、その両端を摘まんで引っ張る。

包み紙が、ぐるりと回る。

「サボった。」

事も無げに言い、にやり、と笑うと、カシスは中身を口に放った。

「単位、取れないわよ?」

それほど、心配して言っているわけではない。彼のことだから、無計画に見えていろいろと考えているのだろう。それでも、なんとなく、言ってみた。

脅しみたいに。

カシスは、明後日の方を向いて咀嚼するでもなく返事するでもなく口をもごもごと動かしていたが、不意に、思い出したようにブルーベリーを振り返る。

「ブルーベリーってさ。」

カシスの言葉に澱みはなかった。口の中のものはいつの間にか無くなっていた。

覗き込むように、覗けそうな青紫の瞳で、まっすぐにブルーベリーを、見ている。

「甘いの、スキ?」

「え・・・・。」

珍しい、青みのかかった銀色の髪。整った白い顔立ちと、何よりも、強く、揺ぎ無い瞳。

彼を焦がれる女性の気持ちは、分かる。



けれど、私は違う




「・・・嫌いじゃ、ないわ。」

手放していなかった空の包み紙を左手で縒るように玩びながら、カシスはに、と笑った。

「へぇ。それはよかった。」

あっけなく左手のオモチャを床に落として、カシスの右手は袋を掴む。そして左手を突っ込んで。

その手に得た物を、ブルーベリーに放ってよこした。

「やるよ。」

それから体を半分起こして、自分が散らかしたゴミを次々と袋へ入れ始める。

ブルーベリーはその手の中にあるものを、見た。

その形状は、チョコレート。

それはカシスがそれを食べるのを見た段階で分かっていたけれど。

ゴミを始末し終えて、カシスは立ち上がった。

「それじゃーな。ブルーベリー。」

ゴミの入った袋をヒラヒラさせて、カシスは踵を返す。

「どこ行くの?」

「帰る。」

振り返りもせずに、答えた。次の経済学の授業もサボる気らしい。

「・・・・・。」

ブルーベリーは、取り残された。

包み紙を開けると、真っ黒なチョコレートが覗く。

名残惜しげに、恐る恐る、口に含んでみる。

「・・・・苦い。」

彼にとっては、これが甘いのだろうか。

纏わりつくような、執拗な苦味が、口の中いっぱいに広がる。

けれどそれは確かに、微かにほんのりと甘かった。

濃い、チョコレートの独特の芳香。

彼の姿が、脳裏に蘇る。

交わした言葉は、あまりに少ない。





貴方がもし、私を選ぶというなら



私はそれを拒まない



私の目に貴方が映ればそれを追い、



貴方の声が私を呼べば私はその声だけを聞く





だけど











それはきっと恋とは呼ばない

























+添え言+

・・・どうしよう。突っ込みどころが多すぎる・・・。
カシブル推奨派ではないですが、こういうシビアな関係なら好きです。
ホントは両想いなのに、ブルーベリーは認めないし、カシスは身をひいてる、とか。
これがそうとも限らないけど(何が言いたい)





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