「驚いた・・・。そんなこともできるんだな。お得意の呪術か?」

ガナッシュは皮肉げにそういって笑った。一方でジュリアは物言わずそんなガナッシュを見つめている。

一面の闇。光はない。それでも互いの姿だけがくっきりと浮かび上がっている。

どちらかといえばジュリアの方は色が薄く、不安定だ。

それでも、その表情はガナッシュよりもジュリアの方が落ち着いて、据わっている。

「まあ、そうだな。俺は魔術よりこっちのが得意だし。」

静かに肯定するジュリアの声は変な風にこもって響いていくけれど、一字一句、聞き逃すことはなかった。

「何をしに来た?こんな・・・夢の中にまで。」

ガナッシュの笑みは自嘲めいていて、ジュリアは気に入らないというように目をそらす。

「引き返せ、と言いたいんだろう?」

「言ったところで引き返しやしないくせにな。」

「・・・・。」

「俺はオリーブみたいに未来も心も読めない。お前の未来も過去も知らない。

でも、そんな俺から見たお前は自分の闇に囚われてばかりいる・・・

ように思える。」

ジュリアは困った顔をした。言葉も歯切れが悪い。

「もっとみんなの声を聞いてくれ。そして『違う』ことを知ってくれ。

お前が頭で考えていることと、現実が。」

「なにが・・・どう違うと言うんだ、ジュリア?」

無言で二人は見つめあう。無音の闇の中で。一方は挑戦的に、一方は無表情に。

「それは自分でよく考えてくれ。それほど難しい問題でもないはずだ。」

ジュリアがにやり、と笑う。

「本当はここで連れ戻せばいいんだが、俺一人じゃ荷が勝ちすぎるし、意味もない。

夢は忘れるもんだしな・・・」

「・・・ジュリア?」

ジュリアの姿が揺らぎ、色が薄くなってゆく。

「多分、目覚めたお前はこの事を覚えてないだろう。別に構わないけどな。

俺はお前に会いに来ただけだし。」

くつくつ、と笑う声も薄く小さくなっていく。

何故か。何故かガナッシュは寂寥感に見舞われた。

引き止めても無駄だとわかっている。引き止めることもできないでいる。

「安心しろ。すぐに追いついてやるから。皆を連れてな。」

最後にそれを言い残して、ジュリアは完全にいなくなってしまった。



目が覚めた時、ガナッシュは何か大切なことを夢に見た気がした。

それを思い出そうとしたのだけど、それよりも先を急ぐという気持ちが働いて、

結局その後、その夢を思い出すことはなかった。







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