一言多いとか、一言余計とか、そういうのはシードルの常套手段で、ひどいときには余計なことしか喋らない、なんてこともあり、つつがなく人間関係を築きたい私にとってイタい事になりがち。多分、わざと半分、無意識半分なんだろうけど・・・。
でも、私シグマはそんなことでめげません!
そういうわけで、今日も元気に(違法的な)訪問を。
なんとなく、(合法的な)訪問は、仕事(デッサンモデルね)の時と決めている私。特に意味はないんだけどね・・・。
侵入方法はちなみに企業秘密。
さて、今日は授業もないし、完全にフリーのはず。シードルも結構なインドア派だから、きっと家にいると思うのよね。
どこにいるかなー。
と、思いつつ、広くて込み入ったシードル邸を徘徊する。広さと人数がつりあっていないシードルの家は、なんだか少し寂しい雰囲気で、シードルはこういうのにもう慣れてるのかな、とか思うと、勝手な寂寥感ぽいものが湧いてくるから、困る。
だから、私が必要以上に騒がしくしてあげようなんて考えは、余計なお世話なんだろうなぁ。タメイキ。
それにしても、シードルが見つからない。
ヘンだなぁ。今日はどこかに出かけたのかな。
だったら、待ち伏せという非常手段もアリなんだけどー。折角会いに来たんだし、ね。
会えなかったら、寂しいし。

「シードルなら、留守だよ。」

声。
・・・え、声?
なぁんだ、いたんだシードル・・・みたいなことには、ならない。
だって、違うから。もっとずっと、大人の声・・・。
恐る恐る振り返ると、柔らかな物腰の、どこかで見たような・・・見なかったような・・・、覚えのある雰囲気の、おじさん(おじさま、といった方が雰囲気には合ってるのかもしれない)が、明らかに間違いなく疑いようもなく私を見下ろして微笑んでいた。
えっと・・・。ええっと・・・・・。
一体この人は誰でしょう。状況から答えを導き出せ!
というか今、私の凡な脳みそが、最悪の解答を弾き出そうとしているのだけど・・・・。
「お、お父様ですか!?」
答えあわせ!
思わず敬語になる私!
「いつも息子がお世話になってます。」
微笑。って私、満点ですか!?というか、私が満点なんて取ったら、天地がひっくり返ると言ったダレカサン、確かに天地はひっくり返りました!!馬鹿にされたと思ってすいませんでした!!
天地無用!
・・・・じゃなくて。大丈夫。何もひっくり返ってないから。私の気が動転してるだけ。
・・・あぁ、色々マズいから保護者の方には見つからないように気を遣ってたのに・・・。シードルもきっとその方向でいってたのに・・・。
フイにしちゃった。ごめんねシードル。
「シードルなら、近くの河原にいると思うよ。」
「そ、そうですかっ!勝手にお邪魔してすみませんでしたー!」
ここはひとまず、撤退。この状態でまだ居座ろうなんて思えるほど、さすがに私も図太くはない。はず。
いや、現に今撤退してるしさ。
まあ、シードルの居場所情報も得られたことだし。・・・・あぁ、このこと、シードルに言ったほうがいいのかしら・・・。
というわけで、敗戦撤退した私。
シードルを捜しましょう。見つかったものはしょうがないし・・・。終わったこともしょうがないし・・。


それから歩き回ること20分くらい。私はやっとシードルを見つけることができた。
多分、あの河原で黄昏てるのがシードルだと思う。
「シードルー」
「・・・・・あ、シグマ。」
正解だった。シードルは完全にリラックスモードで、散々焦りまくった私の心情とは対照的。
「どうしたの。こんなところで。」
「・・・・えっとね。まず、ごめんなさい?」
「・・・・なに?」
シードルの表情が引きつる。そりゃ、出会いざまに謝られたら「何?」ってなるよね。
「シードルのおとーさんに出くわしちゃったの。」
「・・・・・何やってんの・・・。」
「や、やっぱまずい、よね・・・・・?」
あさっての方向を見つめるシードル。・・・・現実逃避?
「まあ、済んだことは仕方がないよ。」
そんな男前な。じゃない、現実逃避しながら言わないで・・・。
「そしたら、シグマはさ・・・。」
何か言いかけて、シードルは言葉を濁して口を噤んだ。
・・・え、何?
「なんでもないよ。」
なんでもないことあるかい。怪しいよ。なんだよ。全部言ってよ。気になるなぁ。
饒舌なフリして、大切なことは何も言わない、そういう手段があって、それもやっぱりシードルの常套手段。
多分、それは私も同じ。
こんなハプニングがあっても、私はぜんぜんめげていないこと。懲りていないこと。それを私はシードルに言わない。いずれ、態度で知らしめることになるんだと思う。
でも、言わないのは、シードルが訊かないからでもある。
逆に、これを機にもうそういうのは辞めてほしいんだったら、私もそうするしかないと思うんだけどね。
それでも、シードルは何も言わない。
それってつまり、今のままでいいってことなのかなぁ。
今のままがいいってことなのかなぁ。
言ってくれないからわからないけど、私も、訊くのはちょっと怖いなぁ・・・。


シードルも私もだんまりで、珍しく私たちに沈黙が降りた。
考え事をするには、丁度いい空間だった。
いつも大体どっちかが喋ってるんだけど。というか、私が沈黙に耐えられないタイプの人間だからかな。口火を切るのは、大抵私。
だから、初めから私があまり何も言わなければ、沈黙が訪れるのはありそうな話。
・・・でも、こういうのもアリだよなぁ、と思う。
いつも通りじゃない、新鮮な感じも、私は好きだ。
それに、当初の目的は果たしたし。
私は、文字通り、シードルに会いに来たんだから。


結局、私たちは日がだいぶ傾くまでその河原にいた。ぽつぽつと、取り留めのない話をしながら。
いわく、シードルはインスピレーションを得るためにここに来たんだそうで。
何か湧いたのかどうか聞いてみたら、「君のおかげでね」という返事が返ってきた。
ということは、私ってば、なにか貢献したのかな。あんまり心当たりがない。

それじゃあ、今日のところはここまでということで。
「じゃあ、またね。」
私は言った。
今、私たちは道を分かつけれど、未来でまた会いましょう、みたいな言葉を。(かなり大げさ)
シードルは何でか一拍置いて、
「うん。」
と言って、笑った。
その表情、私が好きなことは暗黙の了解。言わずもがな。

要するに言わないということは遠慮や照れで、本当は気がついてほしい時。
言外に、あるいはそれとなく、伝えてみようと試みる。
そんな挨拶。そんな会話で。


また会いたい


なんて、面と向かって言えるわけがない。






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・ひとりごと・

シードル父は妄想です。
あと、途中西尾さんを意識・・・できてない!?(汗)


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