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「・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 「和泉君、どうしたんですか?」 木枯らし吹き荒れてそうな暗い表情で棒立ちになっている和泉が握り締めていた一枚の紙を、 背後から突然現れた依桜(イオ)が盗み取る。 和泉は般若の形相で振り返った。 「返せよ!!」 しかし依桜はそれには目もくれず、奪い取ったその紙を掲げるようにして眺める。 そうされると、依桜より頭ひとつ分くらい、背の低い和泉には手が出せない。 「あぁ、これは・・・・・。」 その紙きれの高度が落ちたのを、和泉は見逃さず奪取に成功する。 しかしその表情は屈辱感に満ちていた。 依桜は、小首をかしげた。 「あれだけ難しい化学式を解ける和泉君でも、出来ないことはあるんですね。」 和泉の表情がより険しくなって、睨んでいるようにも見える。 「赤点ですよ、物理。」 「・・・分かってるよ。」 「しかもかなりひどいですね?」 「勝手に見るなよ」 「基本でつまづいてますね?」 「うるさいな!!」 「この有様で、来週の追試も出来るんですか?」 「・・・なんで追試があること知ってんだ?」 今回は試験内容が難しく、全体的に点数が低かったとかで追試が行われるが、行われないこともある。 追試の有無は授業に出ていないと分からないはずだが。 そもそも依桜と和泉は学年が違うので、授業がかぶる事はない。依桜はダブったことがない。 依桜は和泉の質問を無視した。 「図書館で科学雑誌読みあさってる場合じゃあ、ないですよね」 「・・・分かってるって言ってるだろ」 「化学室で試験管洗いしてる場合でも、ないですよ?」 「・・・・。」 放課後、和泉はたまに化学室で試験管洗いなどの手伝いをしている。 その労働の応酬として化学室にある一般では手に入りにくい薬品を(内緒で)分けてもらう為で、 決して試験管を割ったとか、ビーカーを割ったとかのペナルティではない。 「・・・・物理は、管轄外なんだよ・・・」 生物、化学などは、問題を作る先生との、満点を取るか、取らないかの熾烈な戦いを繰り広げている和泉だが、 同じ理系でも物理と地学では話が別らしい。 地学は諦めてとうの昔に打ち切ったが、物理は相変わらず何の未練か、続けている。 「・・・・。」 「僕が、教えましょうか?」 「は?」 依桜の提案に、和泉の顔は未確認生命体でも見ているかのような、珍妙な表情を作る。 「僕は、物理も履修したので教えられると思いますよ。」 「・・・いや、いい・・・・。」 「・・・・。せっかく先輩が、申し出ているのに?」 「お前はなんか、裏がありそう・・・」 「・・・・。別に、構わないですけど・・・・・。 単位を落とすのは、和泉君であって僕ではないから。」 「・・・・・・・・。」 「落下中の物体には、重力が働いています。ただし、空気抵抗はこの場合、考えないとして・・ ・・・・和泉君、初速度を入れる場所を間違えてますよ。というか、公式そのものが間違っています」 「????」 「・・・珍しいね。二人が一緒に勉強してるなんて・・・」 「明日は雷が落ちるな。でも、何で調理室なんだ?」 「依桜の根城だからだろ?」 シードルと、カシスと、ジュリアが紅茶を飲みながら勉強モードの二人を傍観している。 調理室には、マドレーヌケーキの焼けるいい匂いが広がっている。 家庭科部員の皆さんが、部長(依桜)を差し置いて一生懸命部活に勤しんでいるためだ。 ちなみにジュリア達3人は、部員でもないのに放課後よく遊びに来てはお菓子をご馳走になっている。 いい身分だ。(シードルだけはたまに手伝うので、かけもち部員といえなくもない。) 「おいしい匂いで気が散らないのかな?」 「どうだろな。横にいるのが天敵だからな。」 和泉の必死さと裏腹にまったりと和んでいる3人には緊張感も、遠慮もない。 そこへ。 「こんばんはーッ!!和泉ちゃんいますかッ?」 テンションの高い声と共に、フェルマータが現れた。そして和泉の姿を確認すると、 ぱっと顔を明るくして和泉に飛びつく。 がり、とノートに意味のない線が引かれた。 「探したんだよ。図書館とか化学室とか。何やってるの?」 「・・お前、まさかそこでもいちいちその挨拶したのか・・・? 図書館でそれやると怒られるだろ」 「うん。怒られたよ。」 「和泉君は追試の勉強です。フェルマータは大丈夫でした?」 「うん!ギリギリ60点!!」 「ほんとギリギリだな」 「うち5点は先生の採点ミスッ!やったね!!」 「待てコラ」 やったね、じゃ、ない。と突っ込むが。 「運も実力のうちですよ。」 「じゃあ依桜、お前それがもし俺だったら何て言う?」 「セコいですね」 「・・・差別だ」 物は言いようなのかもしれない。 「和泉の追試って、来週の今日だよな。それまでずっとあんな調子なのか?」 「じゃあ、毎日見に来ようか。珍しいし」 「ジュリアはお菓子目当てでしょ・・・?」 その一週間、雷は落ちなかったが、雨は降ったりして・・・ 「和泉君はやれば出来る子ですから。大丈夫だと思います。」 「あぁ、・・・・。ありがとう」 「・・・・お礼は言わないでください。和泉君にそう言われると、なんだか悔しいです。」 お礼を言われると悔しいというのも妙な感じだ。けれどそれが依桜らしい感じもする。 和泉は薄く笑った。 「・・・でもさ。別に俺達、友達じゃないよな?」 「当然です。」 「じゃあやっぱ、タダ働きは、よくないよな。 うん、俺も、タダ働きはしたくない。これは、借りっつーことで」 「じゃあ・・・・・。」 何か言われる前に立ち去ってしまいたかった和泉だが、既に、依桜は何か言いかけ始めていた。 和泉ははらはらしながら耳を傾ける。 「和泉君の次回のテストの点数、全教科教えてください。」 「・・・全、教科?」 「そう。和泉君が大の苦手としている、国史も、です。」 「・・・・。」 後日。 「依桜さん、和泉ちゃんに何か言った??」 クッキーの型抜きをしている依桜に、ひょっこり現れたフェルマータが尋ねた。 「?何故?」 「別にー。ただ、和泉ちゃんがあれだけ必死に歴史書読んでるトコ見るの、初めてだったから。」 フェルマータは遠くを見ている。多分、その様子を思い浮かべているのだろう。 依桜は、笑う。 「まあ、たまにはいいじゃないですか。歴史も、分かればなかなか楽しいですよ。」 戻る +独り言+ ほとんどオリキャラしか出てないよ・・・。 しかもこれ、マジバケの世界観とか、全く関係してないし。 作るのは、楽しいんだけどね・・・。 余談ですが、依桜は歴史が大好きです。布教活動に余念がありません。 |
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