「どこへ行くつもり?」



全てを見透かしたような静かな声色で呼び止められて

憔悴した表情でシードルは振り返った。

「先生・・・・」

眠っている、と思っていたのに。本当、こういうときは抜け目がない。

呆れを通り越して、感嘆する。

「どこへ行くの?たった一人で。」

優しげな表情に微笑を湛えて。

訊くまでもなく・・・知っているくせにと思いながらシードルも無理して笑った。

「皆のところへ・・・・」

「そうね・・・。でも、今はダメ。

ちゃんと休んでからっていう約束でしょう?」

「・・・・。」

シードルは、俯いて黙る。



シードルはラキューオにいた。

生者であることを星の見張り番に見抜かれ、ここに送られてくるまでは。

すぐにでも、ジュリア達のもとへ戻りたがっていたシードルを、魔バスに残っていたクラスメイト達が引き止めた。

ラキューオに生息する刃属性のモンスター達の魔法を、みんなの盾代わりに受けて

魔法によって際限なく傷つき、魔法によって際限なく癒されるその体があまりに痛々しかった為だ。

皆は無茶をする、と言う。シードルにしてみれば属性の持つ特性を利用したに過ぎないのだが・・・・。

それでも、と、ジュリア達の元へ戻る前にここである程度休息を取る、ということを約束させられた。シードルの記憶が正しければ、そのとき先生は眠っていたはずだ。



触れられる距離まで、近づく。

「本当のことを、言ってよ」

顔を上げて、シードルは訴えた。

「もう、嘘はいいから・・・・本当の、事を」

哀願するように、声を絞り出して。

「貴方が見るもの。貴方が感じること。全て、間違うことのない、真実よ。」

それでも、足りない?そう言って、先生はにっこりと笑う。

どこか、困ったような笑い方だった。

シードルはゆるゆると首を振る。

間違っている、と、何故か悔しそうな顔で。

「先生も、全部知っていたんでしょう?

僕らがこうやって、ガナッシュを追ってこの場所に来ていることすら」

「・・・・それはちょっと、違うかな。」

重たい灰色の空を仰いで、大袈裟な息を吐く。

「初めから、全部わかっていたわけじゃないの。校長先生はどうだかわからないけど。

でも、ね。私は皆を信じてる。

頑張ることはいいわ。でも、無茶はしないで。シードル、貴方も。」

戻ろう、と差し出す手。シードルはそれを取らずに、ただ先生の顔を見つめる。

「僕は、先生を・・・お母さんみたいだって、思ってた」

シードルは笑った。無邪気な風に、笑う。

その目は、笑っていなくて、どんよりと重たく曇っていた

「似てるよ」

「・・・・そう?」

「うん。嘘つきなところとかね。」

顔から、どんどん笑みが引いていく

「先生が、いつシードルに嘘をついたのかな?」

「・・・・。」

悲しげな無表情で弱々しく、責めるように見るシードルに、先生は笑いかけた。

「バスへ、戻ろう?戻って、休もう?」

「・・・・・。置いて行かれたく、ない」

シードルは呟いた。

ここまで来たのだから、もう徹底的に見届けないと気が治まらない。

そう言う。

「大丈夫。ジュリア達は、シードルを置いて行ったりしないし・・・・。

それに、シードルからわざわざ行かなくても、ちゃんと迎えに来てくれるよ。

先生には、わかる。だから・・・。それまで、休んでいよう。ね?」

「ジュリア達が・・・・?」

シードルの手を取って。



荒野の中魔バスを見る。

灰色の空と灰色の砂と

その中にある淡い水色の車体。そのアンバランスさが、

何故かシードルを安堵させる。











「寝てるのか?」



くったりと座席に体を預けて、小声で交わされる会話に反応を示さない。

ジュリアは腕組みをして考える仕草をする。

「・・・まぁ、折角だから俺も寝よう。」

そう言って、座席に寄りかかった。

「ラキューオの続きはどうするんだ?」

「おやすみ」

目を閉じて、数分もしないうちに規則的な寝息が聞こえてくる。

すばらしい寝つきの良さだ。











傷が癒えなかったとしても



また戦いが待っているから

















こんなに冷たくて



こんなに荒れ果てたこの大地に







追い討ちをかけるように



夜の帳は下りる













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・独り言・

書き始めた時の意図と違うことに・・・・
書きたい事全部詰め込もうとするからおかしなことになるんですね。
ラキューオでは前衛を主人公、カシス、シードルで固める私。
刃魔法なんて恐くありません。
ところで相変わらず話を締めくくるのが苦手なようです・・・・






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