「しっかし、食いモンの為だけに舞踏会に紛れ込もうとは大胆だねぇ!!」

ジュリア(シンデレラ役)は、魔バスの隅っこにちょこんと座って、仏頂面で窓の外を眺めています。

それに引き換え、バルサミコは先程生命の危険(!!)まであったというのに、さも何事もなかったかのようです。

ちなみにアンジェリカはお留守番です。

曰く、「私の分まで食べてきてください。」

「あとどれぐらいだ?」

「まだもう少しだな。スピード上げるか?」

「いや・・・。安全運転で頼む。こんな所で死にたくはない。」

それにしても、魔バスは一人で使うには少し広すぎます。逆に空しくなってきます。

カエルグミが紛れ込んでいるあたりが余計に憐憫を誘います。

そこへ。

「・・・・ん?」

「? どうした?」

魔バスが止まりました。

「エンストだ。」

「なんてこったい!」

「落ち着け、少年。この程度はな、なんてことないんだよ。

ちょいちょいと直すから、迷子にならない程度に散歩でもしといてくれ。」

「要するに、降りろと。」

外は、随分と暗くなっています。ジュリアはバルサミコにケリかましたい気持ちをなんとか押さえ、仕方なしに魔バスを降りました。

(迷ったらシャレになんないな・・・)

ジュリアは慎重に、そこを動かないつもりでした。

しかしジュリアは、何気なく振り向いたその先で、何かがちかりと光るのを見ました。

好奇心に、火がつきました。

ロケットダッシュをキメ、それを、思い切り掴みます。

「イテッ!?」

「・・・ん・・・・。」

ジュリアは、手を離しました。

「何だ、人間か。」

ジュリアにとって珍しい銀色の、長い髪。光ったように見えたのは、それだったようです。

「ちくしょー・・・。もう見つかったか・・・・?」

思いっきり引っ張ったのが痛かったのか、涙を滲ませて、その人は振り返りました。

「・・・・何の話だ?」

「・・? お前、城の者じゃないのか? そういえば見たことないような・・・。」

「・・・・。」



その頃。

「あ、兄貴ーッ!!キルシュの兄貴!!大変だーッ!!!」

厨房に、少年の甲高い声が響きます。

「何ーッ!?どうした!?なにが大変なんだ!?」

負けじと、もう一つの、力強い少年の声も響きました。

「王子様が、脱走したって!!」

「何だって!?じゃあ、今日のパーティーはどうなるんだ!?」

「だろ!?どうする!?兄貴!!」

「・・・甘いね。」

二人は、背後の冷ややかな声に振り返りました。

「あ、シードル・・・・」

「料理長って呼びなよ。

カシスが居ようがいまいが、僕たちの仕事は料理を作ることだよ。

カシスがいないというなら、折角集まってくれた御仁たちにせめて料理だけでももてなそうよ。

何二人ともサボってるのさ」

「いや、そこは料理長も王子様って呼ぼうぜ・・・」

「っていうか!!今日の為に集められた食材達を見なよ!?

どれもこれも超・高級食材ばかり!!あの馬鹿の無茶のおかげでフイにする気!?

そんなこと、できる!?僕にはできないね!!

もったいないお化けが、それはもう空前絶後の規模で出てくるに違いないよ!」

料理長、シードルの包丁を握る手に力がこもります。

キルシュとセサミは、なにか、逆らいがたい強力な圧力を感じ、ツッコむことも忘れて持ち場へ戻りました。



そのころ、その当の馬鹿は。

もとい、王子様カシスは。

「結局ばれてやんの。」

魔バスのジュリアの隣の席で、ため息を吐いています。ジュリアは、にやりと笑って。

「俺の推理力を甘く見るなよ、青二才。」

「うっわ!!すげえなんかむかつく!!」

「ははは!!賑やかだな!!やっぱ旅はこうじゃねぇとな!!」

「魚は黙って安全運転してろ!!!」

「ははは!!スピード出してやろうか?あーん?」

「ちょ・・・っ!!前向け!!前!!」

お城まであと少しです。











つづく。









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・独り言・

もったいないお化けって知ってますか?








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