空はよく晴れていて、光の粒をばら撒けたような、大袈裟なまでの星空が見える。

ぱちぱちと爆ぜる炎の揺らめきが、不安定な影を作ったり消したりして、星に負けじと光を造る。

加えて、香ばしいいい感じの香りが鼻をくすぐるのだけれど、それは敢えて、思考の外へと追いやっている。

「焼けたぜ。」

淡々とした口調が、しかしその思惑を打ち破った。

「うぅ・・・・。」

こんがりといい色になった串刺しの何かを、ジュリアは嬉しそうな表情であれこれと眺める。

他の誰もが若干引けていることに関して、彼は全く、何の注意も払っていない。

数本の串刺しのうちの一本を鼻元に近づけて匂いを嗅いでから、大丈夫そうだ、などと呟いている。

「お前って、どこに行っても生きていけそうだよな・・・」

呆れたように嘆息をついたのは、ジュリアを除いて一番平然として見えるカシス。

「色々考えてるんだぜ、俺だって。さすがにカエルグミばっかじゃ栄養偏るだろ。

どこにでも村があるじゃなし。俺たちって成長期だしな?」

「だからって・・・・。も、もんすたーをさ・・・・」

やや潔癖の気があるシードルの表情は真っ青で、他の誰よりも、ジュリアとの距離をとっている。

一方でジュリアは手にした串をくるくると回して、値踏みするようにして見ている。

それから、何の躊躇も無くかぷり、と噛み付いた。

ジュリアがおとなしく咀嚼している間中、相変わらず燃え続ける、ジュリアの魔法による炎の爆ぜる音を除いては沈黙だった。

「でもこないだのだだちゃがにはうまかったろ?」

「あれは、地元でも郷土料理になってるみたいだったじゃないか。

でも、それ・・・・、・・・・・・・・。」

途中で限界に達したらしく、最後まで言わずにシードルは完全に口を閉ざす。

「ジュリアって勇気あるなー。」

婉曲にカシスが代弁をする。

「食ってみろよ。大丈夫そうだから。

もしなんか当たったりしたら、俺が責任もって診てやるから」

「・・・・いや、もしなんかあるとしたらまず真っ先にお前からだろう。」

「わからねぇぜ〜?」

にやり、と笑うジュリア。

・・・確かに、ジュリアは何があったとしても平気そうに見える。

現実としてそんなことは無いのかもしれないけれど、不思議とそんな雰囲気がある。

羨ましいような、そうでもないような、妙な感じだが。

「でもさ〜。ワープ屋さんで、近くの村までとんでいけばいいんじゃないの〜?」

いつものまったりとした口調で、少し眠そうにアランシアが意見する。

彼女もやはり、その串焼きに手をつける気はなさそうだ。

「いや。」

1/3くらいを食べ切ってから、ジュリアは切り返した。

「ワープ屋は、村まではとばしてくれるが現在地にはとばしてくれないんだぜ。

夜毎振り出しに戻されるのは御免だ。」

「確かに、一刻を争う状況でもある、けどな。」

「そうそう。」

1/2くらいの大きさになった串焼きは、なんとなくみんなの視線を集めている。

「それでも、強行軍するわけにもいかないだろ。

寝るときは寝ないといけないし、食べるときは食べないとな。」

「言いたいことはわかるけど・・・。

でもやっぱり、僕こういうの苦手だよ・・・・・。」

「そんなこと。言われなくても分かるくらいにはお前の事知ってるつもりだぜ。」

だからと言ってどうする訳でもないけど。言外にそう言うジュリア。

得体の知れない(正確には知ってるのだが、敢えて考えようとは思わない)串焼きの肉は、大体1/3くらいの大きさになって、そこからは何故かジュリアも口はつけず、刺さっている串を軸にくるくると回転させられている。

日が落ちてから時間は結構経っていて、みんな疲れているし、お腹もすいている。

場の雰囲気はあまりいいとは言えなかった。その元凶が全てジュリアの奇行にある、とは言わないが、一端を担っているのは確かだ。

(誰も信じてくれねぇけど・・・・)

悩んだ末、ジュリアは食べかけの串焼きを炎の中へ放り込む。

(途方に暮れてんのは俺も同じなんだよなぁ・・・・)

相変わらずのポーカーフェイスで、次の串焼きを手に取ると、不意にカシスと視線が合った。

「お前も食えよ。」

思いがけずひとりだけ、皆を置いて行ってしまったような疎外感。

慣れたその感覚が何故か物悲しいのは、柄にもなく不安に似た感情を抱いているということだろうか。

例の串焼きを突き出してやると、カシスは困ったような、嫌そうな顔で目を逸らす。

それから、やはり困った顔のままで、その串焼きを受け取った。

「お、決心ついたか?」

「い、いや別にそういうわけじゃねぇけど・・・・」

引きつった顔で、笑おうとするカシスだが、うまく笑えていない。

そんなカシスの為に、ジュリアはフォローの文句を考えてみることにした。

「その物体が食べられるかどうかは、その成分と人間の消化機能の構造、それからその民族の食文化による。」

「・・・そんな堅苦しい話で誤魔化そうったってそうはいかねえぜ」

そして失敗に終わる。

「食えるんだぜ?カエルだって、カタツムリだって。」

「食用はね。」

「なんだ、シードル・・・久しぶりに何か言ったと思えば・・・」

うずくまってシードルは眠そうにジュリアを見ている。

強行軍とはいかなかったものの、道のりはそれなりに過酷だった。疲労が溜まっていないわけがない。

「眠いんなら寝ろよ。見張りはカフェオレがやるから。」

「エッ オレナノカ・・・・?」

「当たり前だろ。不眠不休の労働。人間に出来ないことをするのが機械の役割ってもんだろうが。」

「ウウ・・・・」

「あたしも〜。寝ようかな〜。」

「おう。寝とけ。」

「村に着いたらもう一度寝直すからね・・・・」

「わかってる。でもまあ、お前も慣れろよ。」

「うん・・・。」

大抵みんな野宿には慣れていなくて、順応能力の高いジュリアやカシスなんかを除けば、村の宿屋でなければ疲れが取れないらしい。それでも寝ないよりはマシなのだけど。

「・・・・。」

「・・・なんだよ。」

「・・・。」

カフェオレが、何か訴えるような目でジュリアを見つめてくる。

「まさか、お前機械のクセに・・・」

「・・・イエ、ソノ、ソウイウワケデハナイノデスガ・・・」

ジュリアの瞳に剣呑な光が宿る。

そのとき。

どさり、と炎の中に何かが投げ込まれた。

その何かを確認してから、ジュリアは振り返る。厳めしい顔で、眉間にしわを寄せて、口元を押さえた状態で、カシスはただ一言、吐き捨てるように言った。

「まずッ!!」

ジュリアはもう一度、炎の中を確認してからにやり、と笑う。

「だろ?」















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・独り言・

ほぼ同名のタイトルを日記につけたかもしれないなぁ


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