「こんにちは、おにーさん。」
異国風の、珍しい顔立ちをした少年が、歩み寄ってきたと思ったらそう言ってにかっと笑った。
腹に一物も二物も持っていそうな、いたずらボウズのカオだった。
その向こうでなんともいえない微妙な表情をしている銀髪の少年は知り合いだろうか。
・・・まあ、そんなことはどうでもいい。自分は職務を果たすだけ。
「おにーさん。」
いたずらボウズの方の少年が言った。
まだそれほど年端のいっていない、「青年」にも届かない「少年」だ。
そしてその少年のことは当然何も知らない。たった今会ったばかりなのだから当然だ。
それなのに、その邪な笑みにそこはかとない不吉さを感じるのは、何故だ。
性質の悪い悪戯の標的にされるような、そんな苦い予感。
そして少年は軽い調子で、言い放つ。
「邪魔なんだけど。」


「・・・おい、消えちまったぜ!?」
「ふむ。どんなメカニズムなんだろうな。」
ジュリアの言葉と共に立っていた守衛が消え、そしてそれを目の当たりにしたジュリアの、さして驚いた風に見えない飄々とした態度から、カシスが疑惑のまなざしを向けるのも仕方のないことだろう。
真面目にどうでもよさそうに考える素振りをしながら、カシスの視線に気がついたジュリアは、否定するようにひらひらと手を振る。
「いやいや、俺は何にもしてねーぜ?
 それっぽいことを言えば向こうさんが勝手に何とかしてくれるかなーと思っただけで・・・・なんだその目は。
 これで中入れるんだからさっさと行くぜ。」
人間が消えたメカニズムについては既にもうどうでもいいらしく、ジュリアは言葉通り、さっさと中へ足を進めた。
その後ろで、カシスがやれやれ、と斜め前方。明後日の方向を向いて溜息をついた。
「・・・本当にお前一人で大丈夫な気がしてきたぜ、俺は・・・。」

「ジュリアがいれば大丈夫じゃないの?」
「何を根拠に?」
地下室の暗がりの中、訊ね返しておきながら、アンジェリカの表情は訊かずとも解かっているというそれだった。
「確かにお兄様はお強いです。確かな判断力もある。
 けれど、過信は悲劇を生む。
 私は確かにお兄様を慕い、敬ってはいますが、決して過大評価し、自身のすべきを怠ることはありません。
 お兄様に大事あることは、私の本意ではないのです。」
その言葉は全て、時間が惜しいとでもいうように作業の傍らで紡がれた。言われるまでもないでしょうが、と念を押して。
「そして私はそのために、あらゆる駒を動かします。
 私自身、そしてシードル様、貴方も。」
文字の羅列を映し出していたホログラムが、図面を映し出す。
「僕に、何が出来るの?」

「・・・うぇ、ひでぇホコリ・・・。」
「守衛で護らせてるだけか。中は放置なんだな。」
「そりゃまあ、素人に封印の『場』に立ち入らせるのもアホだろ。
 それにしても・・・。引火したら爆発するんじゃねーの。」
「それは言いすぎだ。」
館の中は、外観に恥じないボロっぷりだ。
封印が弱まったのは風化の所為じゃないかと思えるくらいに。
「まあ、それは封印の様式がわからないとなんとも言えないけどな。」
「?
 様式がわからないと、封印の強化も出来ないよな?」
「そうだな。でもそれはどうでもいい。
 燭台取り戻して帰るのが俺達の目的だ。」
「・・・お前、欲がないよな・・・。」
「皮肉なら有り難くいただいとくが、まさか褒め言葉じゃないよな。」
「当たり前だ。」

「守衛さん、いないね・・・。」
その頃。息を潜めて外側から館を見守る人影が二つ。
「はい。滞りなく進んでいるようで、何よりです。
 では、行きましょう。」
そしてそれを始めてからいくらもしないうちに、アンジェリカは身を正して歩き始める。
「・・・?アンジェリカ、どこにいくのさ?」
よどみなく、歩くアンジェリカが向かう先は、あのいつも守衛が守っている入り口ではない。
呼び止めながら、シードルは地下室で見せられた図面をもう一度頭の中で描きなおしてみる。
「シードル様。こんな時に堂々と入り口から入ってどうするのです。
 囮でもあるまいし。」







つづく。






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・ひとりごと・

何年越しの続き・・・でしょうか(汗)
冒険パート(?)苦手なもので・・・
でもやっと(ネタが)降りてきたのでupしました。
続きはまたそう遠くないうちに。


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