辺り一面銀世界だ。



木立も白く凍り、



広い空も、限りなく白に近いグレイ。



結晶が優しく舞い降りる。



風が攫いながら通り抜ける。





気がつけば、その中にぽつん、と佇んでいた。





髪に、肌に、次から次へ、綺麗な六角形の結晶が降り積もる。

振り払うと、素肌を傷つけることなく、角が折れて壊れて落ちた。

思わず天を見上げてみたところで、激しく舞い降りる結晶から、顔を守るために結局、俯かずにはいられなかった。

風が、小さな隙間に、小さな欠片を運んでくる。

何故だかはわからないが、それでも、少しも寒くない。

全く、温度を感じない。

不思議だ。

けれど、そうやって佇んでいたところで、積もった雪を払わなければならないことに変わりはなく、ただそれだけをし続けるのも億劫なので、仕方ないから、歩くことをはじめた。

白く閉じ込められた木立が、まるで導くように道を作っているので、自然それに沿って、歩く。

白い絨毯みたいな大地に、体重が沈むたびによろめいたり、引き抜いたりして、動きにくいけれど、ちょっぴり楽しい。

振り返ると、足跡が点々と続いている。

ただ1人分の足跡だ。

遠くなるほど薄く、消えかかっている。

雪に呑まれる前に、少し速度を上げて、歩きを再開した。

それからいくらかして。

疲れが出る前に、足を止めた。



一面の白銀世界に、赤の色彩を見つけた。



それは、焔の色だった。



寒くはないけれど、その色に。

惹かれるように、走り出した。



「走ると危ないぜ。」

「君は誰?」

焔の前に、1人、少年が座っている。

荒い呼吸に構わず、訊ねる。

白銀の世界で、初めて出会った人間だ。

「名は、ジュリアという。」

「ジュリアって、女の子の名前じゃないの?」

「失礼な。お前の狭い価値観だけで物事を測るもんじゃないぜ。」

「・・・そ、そうなの・・・?」

少年は無愛想に、焔をじっと見つめている。

「ここに座ってもいい?」

「ああ。好きにすればいい。」

ジュリアから、30cmくらい離れて座って、ゆらゆらと、音もなく燃える焔を眺める。

「ここで何やってるの?」

「火の番だ。この火が消えないように、見てる。」

無愛想ながらも、ジュリアは律儀に答える。

ジュリアはほとんど焔から目を逸らさない。

「でも。」

不思議なことに、焔から、全く熱気を感じない。

「この火、どうやったら消えるの?」

炭も薪もない。

焔は、雪の上で、ただそれだけで、燃えている。温度もなく。

真っ白な雪の、その上で。

「・・・・。」

ジュリアは、答えなかった。やっぱり、焔から目は逸らさない。

「・・・・。」

「・・・・。」

沈黙が訪れると、もう雪も積もってこないし、なんだか疲れて、眠くなってきた。

座ったまま、少し、力を抜いて。

うずくまって、ゆっくりと、瞬きをした。

目を閉じる寸前、焔が消えそうにひゅるり、と震えた気がした。

「シードル。」

目を閉じてコンマ秒くらい。すぐにジュリアが声をかけたので、閉じかけた瞼は結局、瞬きをしただけに終わる。

頭を起こすと、ジュリアがじ、とこちらを見ている。

「気をつけろ。寝たら死ぬぜ。」

「なにそれ?」

「雪山の常識だろ。」

わけがわからない、という顔をしている間に、ジュリアは再び焔に視線を移した。

同じように、もう一度焔を見ると、元気に燃え盛っている。

「僕はどうしてこんな所にいるんだろう。」

「記憶が結びつかないんだ。」

「どうして僕はこんな所にいて」

「そして、君と出会ったんだろう?」

ジュリアは2,3秒沈黙して。

「生きてるからだろ」

見当はずれなことを言った。

「死んでたら永遠に出会えないだろ、俺たちは。」

「これまでも、これからも。」

「火が消えたら、俺の役目は終わりなんだから。」

全く見当はずれなことを言った。

「いたけりゃいても構わないが、行くなら行けよ。

火は俺が見といてやるから・・・。あんまり、雪山に長くいるもんじゃないぜ。」

「どこへ行くの?」

「そのまま行けばいいだろ。そうすれば、そのうち抜けられる」

「そうしたら、僕はどこに出るの?」

「さぁな。それは・・・・。

夢から覚めたら、わかるんじゃないか?」

「・・・・夢?」

ジュリアは、焔から全く目を逸らさない。

「ねぇ、ジュリア。

なんで、僕の名前知ってたの?」

「・・・。」

「・・・・。」

「・・・。会った事が、あるのかもな。」

ジュリアはこちらを見て、笑った。

そうかもしれない、と思う。



立ち上がって、雪を払ったあとで、

歩くことを、始めよう。















さて、現実はどこにあるのか。















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・独り言・

ジュリアって、女の子の名前なのかなぁ・・・・。
この話の解釈は個人に任せます。
私のイメージだと、目が覚めたらそこは病院、なんですが。
このネタばっかで申し訳ない(汗)



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