木陰の中で、優しい風の中で。



一人で過ごす、静かな時間



・・・を、得体の知れない何かに邪魔された





「ヤッホーガナッシュ!!アハハハハ!!!」

「・・・・。」

突然木の上から飛び降りてきて、そうのたまったのはマジックドール。

再三確認してみたけれど、やはりどう見てもマジックドール。



確認事項。

マジックドールは、言葉を話すか?



・・・それは否。

恐る恐る手を伸ばす。

たいした抵抗もなく、それを捕らえることが出来た。そして更によくよく確認してみる。

悲しいことに、やはりそれはマジックドールだった。

「あっ、ガナッシュ!!

そいつそのまま放すなよ!!」

先方から、クラスメイトのカシスの声。

突然の声に驚きつつ、顔を上げると特徴的な、銀色の髪のクラスメイトがいた。

その手に虫取り網を持って。

(何なんだ!?)

心の中で絶叫する。

「カシス ツカマエテゴラーン☆」

「イヤお前もう捕まってる」

マジックドールに律儀に突っ込んで、カシスはふうとため息をついた。

マジックドールはというと、ガナッシュの手の中で、びちびちと踊るように跳ねている。

「これは一体何なんだ・・・?」

「コレッテイウナ!!シツレイダゾッ☆」

「うるさい黙れ」

「そいつはまあ、なんていうか、改造に失敗したマジックドールだ。

見ての通り・・・暴走してる」

やれやれ、というアクションをして、カシスは手に持っていた虫取り網を放り投げる。

「ガナッシュも、手伝ってくれ。そいつを修理しねぇと・・・」

「・・・。」



「マジックドールの改造は、勝手にやっちゃいけないんじゃなかったか?」

機械室に向かう道すがら、ガナッシュはカシスに訊いてみた。

ちなみにマジックドールは相変わらずガナッシュの手の中で、愉快そうに鼻歌を歌いながら踊っている。

もう何度、手を放したいと思ったか知れない。

カシスは振り向きもせずに答えた。

「結果オーライだろ?」

「・・・・。」

答えになっていない。

しかも結果は最悪の方向に向かいつつあると思う。

そうこうしている内に、機械室へ辿り着いた。

「捕まえたぜ〜。」

「遅いよカシス!!どれだけ待ったと思ってるのさ!!」

機械室では、シードルが机の上に本を並べて不機嫌そうにしていた。

どうやら今回の件はシードルも参謀しているらしい。

そして、捕まえたのはカシスではない。

「暴走の理由は分かったのか?」

「分からない。・・・あ、ガナッシュー。ガナッシュが捕まえてくれたの?」

シードルはガナッシュに気づいた。

「あぁ・・・・。」

「ツカマッチャッタ☆」

「・・・なぁ・・・いい加減、この手放していいか?」

ガナッシュの心労はピークに達する。

「・・・どれかのパーツ外せば、魂が抜けておとなしくなるのに。」

「・・・・。」

カシスと眼が合った。

・・・逸らされた。

・・・・・。

ともかく、その通りにパーツを外すと、マジックドールはくったりと動かなくなった。

・・・それでも動いたらどうしようかと思ったけれど、ありがたいことに杞憂に終わる。

「誰の魂を入魂したんだ?」

「それはこの際置いておこうよ。

暴走さえしなければ、マジックドールは喋らないんだし。」

「そういうもんかねぇ。」

「・・・。」

ガナッシュも、これ以上話がややこしくなってもらっては困るので、そういうことにしておいた。

「問題は、暴走の原因なんだよね。

おっかしいなあ・・・・。ちゃんと書いてある通りにしたのに・・・」

そうぼやきつつ、シードルは並べられた幾冊かの本のうち一つを手にとって、そのページをめくる。

「そうだな・・・・。」

ガナッシュもマジックドールに興味はあるので、その後ろから覗き込むようにして読んでみる。

すると気を利かせたシードルがその本を手渡してくれた。

「おっ、ガナッシュ、わかるのか?」

カシスが期待を込めて言う。

「・・・・・。」

ガナッシュは答えなかった。

わからない可能性のほうが高い。協力するのは、ただの好奇心。

活字の羅列に目を通す。

「・・・・・?」

「どうかしたの?」

文字を辿るガナッシュの、微妙な表情の変化にシードルが気づく。

「・・・いや、なんか・・・。変だな。」

内容が矛盾している。

そう言って、ガナッシュはもう一度、本に目を落とす。

シードルは、ガナッシュの手の中の本を、下から覗き込んだ。

その視線は表紙を見つめている。

「・・・・・あ。」

「どうかしたのか?」

シードルがそんな声を上げたので、ガナッシュは自分の指をしおり代わりに本を閉じ、

表紙を見てみた。

金色の印字。

それを辿る。

「著者 グラン・ドラジェ」

その一言で、妙に納得してしまう自分がいた。

「校長もお茶目だからなー。」

呑気に笑うカシス。

「ハタ迷惑な本だな。」

顔をしかめるガナッシュ。

「選択を誤ったね」

そう言ってぐったりと机に倒れ伏すシードル。



考えてみれば、今回のマジックドールの暴走は、精神を疲弊させた他に実害はなかったわけで。

この間違いだらけの教本も、ウィルオウィスプ校長グラン・ドラジェの、

「こんなマジックドールがあってもいいんじゃないの」みたいな夢と希望に基づいている(かもしれないというか思いたい)と判断して、

三人は見なかったことにして本を戻し、ある意味哀れとも思えるマジックドールを片付けた。



「まぁ、いろいろあったけど楽しかったな。」

「・・・・そうか?」

「そうだね・・・。今度はちゃんとした資料を選ばないと。」

「は?」

「そうだな。次はお前が入魂しろよ」

「イヤだね。また勝手に喋りだしたらどうするのさ」

「・・・・・。」

「次はガナッシュも一緒にやろーぜ?」

「・・・・・・。いや、いい・・・・。」

まだ、やる気らしい。











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・独り言・

・・・え?

オチが読める?(汗)






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